BTC上昇要因は巨人のペイパルと需給面?
4年に一度のビッグイベントである米大統領選挙は、民主党候補のバイデンさんでほぼ決定しつつある。共和党候補のトランプさんが、法廷闘争という最後の悪あがきを見せているが、いかに権力を有している米大統領でもさすがにこの状況をひっくり返すのは難しい。プロレス好きのトランプさんからすると、最後の大逆転を司法の手に委ねて(圧力をかける)・・・というシナリオかもしれない。このままだと、前代未聞の勝利宣言を行った後に敗北宣言を行うという事態になりそうだが、最後まで何かをやってくれそうなトランプさんは、やはり希代のエンターテイナーだ。
ともあれ、バイデンさんが民主党政権を率いることで、先日指摘した「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」実現の可能性は高まったと考える。となれば、デジタルドル誕生という思惑が、ビットコイン上昇の背景にあるのではないかと連想できる。書き手からしても、こうした分かりやすい要因があると非常に説明がしやすいし、ビットコイン上昇の理由として米大統領選挙を挙げている記事もよく目にする。さて、実際のところはどうだろうか?正直、因果関係はさほど無いと考える。
民主党政権=デジタルドル推進派なので広義の暗号資産買い要因と仮定する(この時点で諸々突っ込まれることは理解している)。今回の米大統領選挙はバイデンさん優位の流れだったことから、「足元のビットコイン上昇とシンクロしている」という考えはできるが、少々冷静になってほしい。「リアル・クリア・ポリティクス」のデータを見ると、バイデンさん優位の流れは少なくとも6月から投票直前の11月まで続いている。夏場も常に7-8ポイント差が開いていることから、バイデンさん優勢がビットコイン買い要因であれば、6月以降、ビットコインは上昇トレンド入りしていなくてはロジックが合わない。実際、ビットコインは7月末辺りから上昇したが、9月上旬にはその上昇分をほぼ吐き出している。そして、10月中旬から再動意し上げ幅を拡大した。民主党政権樹立でデジタルドル誕生をハヤした買いと整理するには少々無理があるし、後付けという整理も厳しい感じがする。では、今回の上昇相場のきっかけは何だったのだろうか?
直接のきっかけとなったのは、10月下旬の米決済大手ペイパルによる暗号資産サービス開始だと考える。ペイパルはこの発表のなかで、数週間以内にユーザーが自分のアカウントから暗号資産を購入・保有・販売できるようになるとした。対象暗号資産は、ビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュ、ライトコインで、4通貨ともにこの発表をきっかけに動意付いた。一度回転が効くと参加者が多いビットコインの上昇率が突出しており、一気に昨年来高値を更新し需給面で売りが出にくい価格帯に到達した。つまり、上昇のきっかけは、このペイパルという決済業界の巨人による暗号資産サービスへの参入で、その後は高値更新に伴う需給要因であると言いたい。
もちろん米大統領選挙の影響も何かしら影響を与えるかもしれないが、直接的な要因ではないだろう。ペイパルの利用者は全世界で3億人だ。仮にペイパルユーザー3億人のうち10%がビットコインを1000ドル分保有するとした場合、3000万人×1000ドル=300億ドルと試算できる。日本円換算で約3兆円だ。その資金が約2500万店舗で利用可能になることを想像してほしい。そのネットワークが市場に与えるインパクトはとてつもなく大きいということが容易に想像できるだろう。
10月下旬にペイパルが発表してから3週間ほど経過している。当初の予定であれば、そろそろ続報が出る頃合いだ。追加情報が出たタイミングで「思惑的な買い」がはげ落ちるかもしれないが、参加者が少ない暗号資産市場は株式市場の常識をしばしば裏切る。高値更新でもみ合っているビットコインはもう一段高の展開を見せるかもしれない。
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