給与のデジタル払いの実現化進む、暗号資産は蚊帳の外(2021/4/7)

「給与のデジタル払い」なるニュースが改めて報じられたので取り上げてみたい。

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給与のデジタル払いの実現化進む、暗号資産は蚊帳の外(2021/4/7)

給与のデジタル払いの実現化進む、暗号資産は蚊帳の外

ビットコインが6万ドルの攻防を繰り広げている一方、SECともめているリップルは不可思議な急騰を見せるなど暗号資産市場は相変わらずにぎやかだ。そのようななか「給与のデジタル払い」なるニュースが改めて報じられたので取り上げてみたい。

このネタは、昨年夏ごろ既に報じられており、正直、新鮮度はない。ただ、昨年度、重い腰を上げないまま終わった政府が、新しい年度入りした途端、「規制改革推進会議の作業部会が、解禁が議論されている給与のデジタル払いについて関係団体へのヒアリングを実施した」と伝わっている。一部報道では、厚生労働省や慎重な姿勢を示す連合、全国銀行協会などから意見を聞いており、厚労省は近く具体的な制度案を示し、今年度のできる限り早期に実現する方針を説明したとのことだ。

「給与のデジタル払い」というのは、言葉を置き換えるとPayPayなどQR決済アカウントに直接、法定通貨を振り込むことを意味する。コロナ禍もあり、キャッシュレスサービスを導入する企業は増加し利用者も増えている。銀行に給与が振り込まれても、こうしたQR決済アカウントに法定通貨を移動するのであれば、最初からQR決済アカウントに法定通貨を振り込んで欲しいというニーズに合致した政策である。

一般的にQR決済事業者は「資金移動業者」という整理になり、法令上は、暗号資産同様、資金決済法の枠組みである。金融庁のHPを確認すると2月28日時点で80社が全国の財務局に登録されている。国の登録を受けて資金移動業を行うわけだが、現在では、高額送金(100万円以上)を取り扱う第一種資金移動業が存在するなど銀行顔負けのサービスを展開している。田舎はまだまだだが、大々的にキャンペーンを展開していることもあり、都内を中心にコンビニなどでの法定通貨を利用する人はめっきり減っている。デジタル払いは首都圏を中心に一定のニーズはあると考える。

一方、給与のデジタル払いに対する懸念はある。それは資金移動業者が破綻しないかどうかである。資金移動業者は、利用者から預かった資金と同額以上の額を供託等によって保全する義務を負う(法第43条)。仮に資金移動業者が破綻した場合、利用者は財務局の還付手続により、供託等によって保全されている資産から弁済を受けることができるが、預金保険機構が存在する銀行とは違うほか、自己資本規制比率などといった厳しい規制も存在しない。給与振り込みの受け皿としての信頼性がまだまだ足りないという考えは少なからずあるだろう。とはいえ、大手メガバンクのシステム障害発生などを目の当たりにすると、QR決済のアカウントへの給与振り込みも選択肢の一つに入る余地は十分だ。

ちなみに、デジタル払いが普及することで、暗号資産が給与支払いの対象資産として利用される可能性が高まるとは考えにくい。足元の議論は、あくまで法定通貨の払い込み先の選択肢にQR決済アカウントを入れるかどうかであり話は違う。暗号資産で給与を支払うという考えは、そもそも法定通貨での支払いではないので論点が異なる。デジタルという言葉を見るとどうしても暗号資産の話に結び付けたくなるのは、この業界で生きている人間の性だが、この辺はわきまえて考えていくべきだろう。

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