金融庁公表【仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング 中間とりまとめ】7

他人が口座の名義人になりすま取引きしている疑いがある「なりすましの疑い」は、大手証券会社が行政処分を受けるほど、金融商品取引業者に対して厳密に行われてきました。

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金融庁公表【仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング 中間とりまとめ】7

II.検査・モニタリングの実施状況…4

2.検査・モニタリングで把握された事例(続)

金融庁の検査やモニタリングにおいて、仮想通貨の取引が急拡大し、ビジネス展開を拡大させる各事業者(主としてみなし業者)において、下記の実態が明るみになりました。

(1)利用者から多額の財産を預かっている認識の欠如
(2)内部管理態勢の整備が追いついていない
(3)登録時点では登録拒否要件に該当していなかった登録業者において、立入検査で問題点が発覚

【事例2】リスク管理・コンプライアンス部門
※具体的な問題事例:A.多数(8業者以上)、B.複数(2~7業者以上)、C.個社(1社)業者の事例に区分

(1)マネロン・テロ資金供与対策
A.多数で認められた事例:人材等の問題
・「各種規制の理解」「マネロン・テロ資金供与対策」「第1線へのアドバイス」等、専門性や能力を有する要員が確保できていない。

B.複数で認められた事例:運用の問題
・口座開設時・取引開始時に確認すべき個人情報に関して詳細な確認を行っていない。
・法人口座に関する(個人とは異なる)確認方法や、法人代表者と取引担当者との関係など、法令で求められた記録や記載がない。
・口座開設時における、反社会的勢力排除のための事前審査が行われていない。
・取引開始後において反社会的勢力と判明した場合の、具体的な対応方針を定めていない。
・取引開始時の『開始時確認』と、再度必要に応じて行う『取引時確認』に対する厳格で具体的な手続き及び基準を定めていない。
・なりすましの疑いがある取引等について取引時確認を行っていない。
・「疑わしい取引」の妥当性判断に対して、当該利用者の職業等の情報を考慮していない。
・高リスク取引に対して、統括管理者による承認を行っていない。

C.個社で認められた事例:運用の問題
・特定の利用者間で複数回・多額取引が行われているにもかかわらず、「取引時確認」も「疑わしい取引」の届出判断も行っていない。
・内部管理規程にて設定した「疑わしい取引」の、しきい値を検知するシステム開発も取引モニタリングも行っていない。
・反社会的勢力者に対して、暗号資産の外部送金を許容していた。
・自社発行の暗号資産に対し、メールアドレスのみの受領で販売し、「取引時確認」も「疑わしい届出の判断」も行っていない。

ここで度々出てくる、他人が口座の名義人になりすまして取り引きしている疑いがある「なりすましの疑い」は、下記のように10年以上前に大手証券会社が行政処分を受けるほど、金融商品取引業者に対して厳密に行われてきました。

なりすましの疑いに関する行政処分例
2003年:カブドットコム証券株式会社に対する行政処分について
2004年:マネックス証券株式会社に対する行政処分について
2006年:大和証券株式会社に対する行政処分について

また同じく「疑わしい取引」に対して、金融庁は『疑わしい取引の参考事例』を公表しています。

これらに共通するのは「疑わしい」という曖昧な言葉であり、金融庁が厳密な規定を定め、各業者が共通の数値基準に従っているわけではありません。どこまで行えば100点満点であり、どれを行わなかった場合に赤点(処分)になるのか、その判断は各業者に委ねられます。

やりすぎて無駄なコストがかかる分にはまだいいですが、大事なポイントを手を抜いた場合、今回のように行政処分を受けてしまう可能性があります。

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