「ICO詐欺の実態」
仮想通貨界隈の詐欺事件といえば、やはりICOに絡んだものが非常に多い。
「仮想通貨羅針盤」のユーザーには釈迦に説法かもしれないが、ICOとはInitial Coin Offeringの略で、仮想通貨を用いた資金調達手段のことだ。調達者は独自のトークン(通貨)を発行し、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨で、このトークンを購入してもらう。調達者は、手に入れたビットコインやイーサリアムなどを法定通貨に交換して、新規事業に必要な資金を賄う。
前回、ICOがIPOと同じイメージで捉えられていることの危険性について説明した。
IPOはInitial Public Offeringの略で、企業が自社の株式を証券市場に上場させることだが、企業がIPOする場合は、上場審査をクリアするため、非常に長い準備期間を必要とする。
これに対してICOは、極めて短時間のうちに、しかも発行体の審査も行わずにトークンを作って資金調達が出来る。迅速さ、簡便さが最大の魅力だが、一方で危ない話も非常に多い。
もちろん、ICOの全てが悪いと言うつもりはない。
きちんとした事業を行うためにトークンを発行している発行体もいる。でも、それは全体の1割以下で、大半は詐欺まがいだ。
実際、どのようなトークンが上場されているのか。
これは、インターネットで検索すれば簡単にわかる。グーグルでもヤフーでもなんでもよいので、「新規ICO」と入力して検索すると、この手の情報をまとめているさまざまなサイトがあることに気付く。
「仮想通貨・新規ICO情報」とか、「ICOスケジュール」といったタイトルが出ているので、すぐに分かるはずだ。これをクリックすれば、過去にICOされた案件、あるいはこれからICOされる案件の情報が、簡単に手に入る。
どんな目的でICOされているのかを見てみよう。
たとえば9月1日にICOされているAQWIREというトークンの概要は、「国際的な不動産取引を処理するためのプラットフォームで、ブローカーと不動産開発者が世界中の外国のバイヤーにアクセスできるようにする」というものだ。
あるいはGIGTRICKSというトークンの概要には、「GigTricksの目的は、数百万のコミュニティによって信頼される世界初の360度フリーランスおよびオンデマンドエコシステムを構築することです。最終的には、ギグを見つけ、家庭で働き、収入を生み出し、消費者のニーズに応えて真の経済成長をもたらすことができるように、才能のある個人に無制限の機会を創出することによって、グローバル不況と戦うGigTricksプラットフォームを構築しました」と書かれている。
ホワイトペーパーには、このようにトークン発行の事業目的がもっともらしく書かれており、投資家はそれを読んで、トークンに投資するかどうかを判断する。一定の販売期間が経過した後、そのトークンはどこかの取引所に上場され、トークンの発行体はビットコインなどの仮想通貨で必要資金を調達する。
問題はそれからだ。
トークンの発行体が、ホワイトペーパーに書かれている事業目的を着実に遂行できれば、トークンの価値が上がり、ICOに応じてそのトークンを購入した投資家は利益を手に入れられる。
しかし、実際にその事業目的が遂行される保証はどこにもない。もともと騙すことを目的にトークンを発行し、資金を調達した後、「諸事情によって事業が遂行困難になりました」といってドロンしてしまうケースもある。
また、ホワイトペーパーに書かれている文言にも注意が必要だ。
最初から騙すことを目的にトークンを発行する連中は、何とかして、自分たちの信用力を高めようとする。信用力が高まれば高まるほど、資金調達が容易になるからだ。
これは最近の話だが、「ゴールドマンサックス出身の何某がICOを行う」といったセールストークを用いて、ICOの参加者を募るというケースがあった。
もちろん、これに対してゴールドマンサックスは、その人物が過去、在籍していたことを言下に否定するコメントを公表している。典型的な詐欺事案といっても良いだろう。
「取引所に上場されれば安心」という考えも捨てた方が良い。世界の仮想通貨取引所は、上場費用さえ支払えば、誰にでも門戸を開いている。上場費用は、安い取引所だと100万円くらいだろうか。
有名な取引所だと億単位の上場費用を取るところもあるそうだが、あまり知られていないような、小さな取引所なら、安いコストで簡単に上場できる。
なかには、トークンの発行体が自ら取引所を設立し、そこに自分たちのトークンを上場させるケースもある。こうなると、仮想通貨取引所への上場が、トークンの信用力を裏付けるものにはなりえないことが分かるはずだ。
そして、これはよく知られたことだが、現在、ICOに関わっている日本人の中には、マルチ商法に関わっていた連中、詐欺事件を頻繁に起こしていた連中なども少なからずいる。こうした事実からも、ICOには近づかない方が無難だろう。
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