土俵際のセルシウス、安価で獲りに行くのは百戦錬磨のGSか
暗号資産融資企業大手のセルシウス・ネットワークが土俵際に追い詰められている。6月13日に「極端な市場環境」を理由に、顧客資産の出金や口座間の資金移動を停止して2週間。暗号資産レンディングの大手企業であるセルシウス・ネットワークが日本の民事再生法に該当する米連邦破産法第11条(通称チャプターイレブン)の申請を視野に入れたと伝わっている。
セルシウスは強烈な逆ザヤ運用だったと推定
セルシウス・ネットワークによる突然の出金停止の要因は「極端な市場環境」としているが、暗号資産価格の急落に伴い想定以上のリスクが次から次へと発生したのだろう。年率10%超でレンディングサービスを行っていたがその高い年率を払うためにはアグレッシブな運用が必要だ。SymbolやXEMのハーベスティング(ビットコインでいうマイニングのこと)は大体3-4%なので、暗号資産の売買を行わない限り大幅な逆ザヤである。
バブルの時に年率5%の個人年金保険を大量に販売したことから1990年代に運用先に困り、証券会社が組成したデリバティブ商品の餌食となった国内生命保険会社の壮絶な最後が思い出される。セルシウス・ネットワークがどのような運用をしていたのかは想像の範疇だが、昨年11月以降の一方的な右肩下がりの相場環境下、厳しいパフォーマンスの連続で自己資金(体力)が無くなったのだろう。
法整備が進んでいない米国では民間金融機関頼み
日本時間6月28日16時30分時点では、チャプターイレブンを申請したというニュースは伝わっていないが、同社の5月時点の資産は100億ドル超とのことから、民事再生法申請となれば暗号資産関連企業としては過去最大規模の破産となる。旧経営陣が債権者と負債の整理や契約の見直しなどを協議しながら120日以内に再建計画を策定する見込みだ。旧経営陣は、数日前から名前が出ている金融の百戦錬磨ゴールドマン・サックスと協議をするのだろう。
日本以外の国は、暗号資産に関する法制化が進んでいないことから、セルシウス・ネットワーク及びその利用者を救済するために米国政府・中央銀行が動くことはないはずだ。民間金融機関であるゴールドマン・サックスが動かなければ、資金力のある大手金融機関がアクションを起こすだろう。未曾有の信用収縮が発生し、各国・地域の中央銀行が国民の税金をフル活用して火消しに動いたサブプライム・ショックの時とは処理の仕方は根本的に異なる。しかも、100兆ドル規模の世界株式市場と比べると暗号資産市場の時価総額は1兆ドルと100分の1に過ぎないため、民間の金融機関で十分処理できるレベルだ。
見えにくい暗号資産デリバティブの市場規模は懸念点
一方、足元の信用収縮に関して気をつけなくてはいけない点はある。それは暗号資産デリバティブの市場規模がよく見えない点だ。これはサブプライムローンの市場規模が明確にならず疑心暗鬼になったことと似ている。恐らくセルシウス・ネットワークは、自社が保有している暗号資産デリバティブのポジション及び必要証拠金額などを正確に把握できていないのではないかと考える。仮にこの数字が明確であれば6月13日の出金停止前に、第三者割当増資など資本増強に動けたはずだ。もっとも、香港暗号資産ファンドのバベル・ファイナンスのように5月に資本増強したにも関わらず出金停止に陥っている事実を見ると、直前に資本増強しても「焼石に水」だったのかもしれない。
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