「クリプトヘイブンのポルトガルが課税に動く」
国内の暗号資産自主規制団体である日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と共同で、企業が保有する暗号資産にかかる法人税の課税方法を見直す要望書を金融庁に提出している件は前週の「金融庁がWeb3のデジタル資産でルール作成、行き過ぎた利用者保護は回避したい」で述べた通りだ。そのようななか、欧州のポルトガルから暗号資産の税金を引き上げるという話が飛んできた。
ポルトガル議会で提出された2023年予算案において、「1年以下の期間保有された暗号資産の取引から得たキャピタルゲイン」を28%の課税対象とする条項が盛り込まれたほか、暗号資産の送受信(送金)には10%の課税、ブローカーを仲介した暗号資産取引は4%の課税対象となることも含まれたとのことだ。
内容を見る限り、利益の額によっては最大で55%(所得税と地方税合算)課税される日本と比べると「暗号資産送金で課税されるのは嫌だけど、キャピタルゲイン28%って良心的じゃない?」という声が聞かれるだろう。ただ、ポルトガルで暗号資産取引を行っていた利用者からすると、「あー、ついにかー」という内容である。
〇暗号資産は「一つの支払い手段の形態」
ポルトガル当局は、暗号資産を「一つの支払い手段の形態」として捉えていたことで、個人の利用者(法人は除く)が暗号資産取引で得たキャピタルゲインは課税対象とみなされていなかった。つまり暗号資産取引に関する課税がこれまで無かった国なのだ。一部の暗号資産利用者は、ポルトガルを「クリプトヘイブン」と称していた。そのクリプトヘイブンのポルトガルが、大きな路線転換を果たしたわけなので、そこそこのインパクトである。
今のところ、クリプトヘイブンであるマレーシアは暗号資産を「資産」としてみなしていないことから、過度な取引を行っていないなどの条件をクリアした個人は、課税対象とならない。また、シンガポールもキャピタルゲインの枠組みを設定していないことから暗号資産のキャピタルゲインに対する課税はなされない。
〇日本の雑所得の税率はそこまで高くない?
一方、日本同様、米国は暗号資産を株や不動産と同じ「資産」とみていることから、キャピタルゲイン税は37%となる。保有する期間によって税率は異なるが、日本の段階によって引き上がっていく雑所得と比べると少々高めな印象だ。日本は4000万円以上のキャピタルゲインが出ない限り、最高税率の55%は適用されないので、実際この税率が課せられた投資家は僅かだろう。「株や債券などと損益通算可能な税制にしてほしい」という利用者の要望はあるが、米国と比べるとさほど高くはないのではないか?という考え方もできる。
今後、マレーシアやシンガポールといったクリプトヘイブンがどのような対応を行うのかが注目だが、今の「暗号資産冬の時代」を考慮すると、暗号資産投資のキャピタルゲインを課税対象として徴収できる税金もたかが知れているような気はする。
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