規制強化中の暗号資産、利用者離れは加速しイノベーションは何も生まれない(22/10/19)

暗号資産に関するマネーロンダリングの対策強化でまた一つ動きがあった。14日、政府は、マネロン対策強化を狙った6つの改正法案を閣議決定した。

規制強化中の暗号資産、利用者離れは加速しイノベーションは何も生まれない(22/10/19)

規制強化中の暗号資産、利用者離れは加速しイノベーションは何も生まれない

暗号資産に関するマネーロンダリングの対策強化でまた一つ動きがあった。14日、政府は、マネロン対策強化を狙った6つの改正法案を閣議決定した。内容は今年9月頃に伝わっていた内容とほぼ同じなので違和感はないが、「トラベルルール」に関する運用がいよいよ法整備の段階に入ったのか、微妙・・・という印象を持った。


(編集部注:「トラベルルール」とは、「利用者の依頼を受けて暗号資産の送付を行う暗号資産交換業者は、送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知しなければならない」というルール。このルールは、FATF(金融活動作業部会)が、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策についての国際基準(FATF 基準)において、各国の規制当局に対して導入を求めているもの。)参考:日本暗号資産取引業協会ホームページ

FATFの存在が大きい

こうしたマネロン規制の強化は、世界的な金融作業部会であるFATFの存在が大きい。FATFは、マネーロンダリング対策(AML)や、テロ資金供与対策(CFT)の国際基準を策定しており、その国別の策定内容の進捗状況のモニタリングを行っている。

日本は2021年8月、FATFから「実質不合格」とされる「重点フォローアップ国」と判定されており、FATFに対する改善状況の報告が義務付けられている。そのようななか、昨年9月、度重なるシステム障害を起こしていたメガバンクのみずほ銀行は、マネロン確認を十分に行っていない状況で外国為替取引の手続きを行ったという事例が発生している。こうした事象が発生してしまうと、メガバンク含め日本政府もマネロン対策に本腰ではないとFATFが考える可能性は高く、日本の金融機関に対する信頼性が問われてしまう状況である。

暗号資産業界では自主規制団体の日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が、加盟している暗号資産交換業者に対策を通達しており、今年4月から主な国内交換所は対応を開始していた。そして10月から、新たに「受取人の住所に関する情報および取引目的等に関する情報の取得」が交換業者に求められるようになっている。

世界でビジネスを展開する日本の金融機関や政府が、FATFの指摘を受けて対策を進めないとグローバルなビジネス展開を継続することが難しいのは容易に想像できる。一方、その厳格なルールに則ることで失われるものも存在する。それは利用者の利便性だ。

かつての利便性は送金手数料の安さ及びスピード感

暗号資産の知名度が向上した2016年から2017年にかけては、値動きの大きさより、「銀行の海外送金よりも安く早く送金ができる」という利便性にスポットが当たっていたように思える。実際、銀行での一回の海外送金の手数料は4~5000円で、送金に伴う期間は2~3日要したのに対して、当時の暗号資産送金はビットコインでも数百円で十数秒という圧倒的な優位性があった。

それから僅か数年で暗号資産の送金は、暗号資産自体の価格上昇及びトランザクション過多に伴う手数料増加で、銀行の海外送金よりも手数料が高くなってしまった。そして、ハッキング対策で暗号資産交換業者はコールド・ウォレット管理(オフラインでの暗号資産管理)がマストとなったことから、ビットコインやイーサリアムといったメジャー暗号資産でも一日前後かかるケースがざらだ。暗号資産の種類によっては3~4日かかることもある。

今回の法規制強化は想定線の内容ではあるが、かつて暗号資産が持ちえた利便性がより損なわれるのは明白である。マネロンの可能性が0で無ければ、その可能性を限りなく0にする規制を実施するというのが今の規制強化の方向性だ。経験値以上の極端な損失を被ることを防ぐ適合性の原則もそうだが、平均から±1σぐらいの範囲内で利用者を管理したがる世界的な規制の流れは正しいのだろうか?規制強化によって、脱法行為もしくは犯罪を行う利用者や、大きな損を被る利用者は減少するのは間違いなさそうだが、こうしたボラティリティを享受できることを楽しむ利用者が離れてしまうような気がしてならない。規制強化からイノベーションは何も生まれないだろう。

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