SEC対CFTC、ゲンスラーSEC委員長の転向を願うところ
暗号資産全体の時価総額が1兆ドルを割り込む日々が当たり前のように続くさえない地合いのなか、米国では金融規制機関である米商品先物取引委員会(CFTC)と米証券取引委員会(SEC)が、暗号資産の法規制に関する論争を繰り広げている。
CFTCは2017年にコモディティとして認知
米証券業金融市場協会(SIFMA)の年次会合に出席し登壇したベナムCFTC委員長は、「イーサリアムは有価証券に該当しないと提案した」「SECのゲンスラー委員長はそうではないと考えているだろう」とコメントした。CFTCは2017年にビットコイン先物を承認するほか、暗号資産をコモディティとして認知するなど、暗号資産に対する一定の理解を示してきた。
暗号資産フレンドリーなCFTCに対して、SECのゲンスラー委員長は当初、暗号資産に対して理解ある当局トップという見方がされていたものの、2020年12月に、「米リップル社によるリップル(XRP)販売は、未登録の有価証券によって資金調達を行っているのに等しい」という主張をベースに米リップル社を提訴したほか、「引き続き多くの暗号資産が事実上の有価証券とみなされるケースが存在する」といったコメントを残している。2020年末に勃発したリップルの提訴は2年経過した今も裁判が続いており面倒な状況となっている。
ゲンスラー委員長の標的はイーサリアム?リップル?
そして今年9月16日にゲンスラー委員長は、イーサリアムのコンセンサス・アルゴリズムをPoWからPoSに移行する「The Merge」が無事に終わった直後、「PoSを基盤とする暗号資産は全て有価証券である可能性が高い」との考えを示した。ステーキングサービスが証券法の対象になるとの考えのようだが、タイミング的にイーサリアムをターゲットとしたような発言に歴史的な「The Merge」後のお祭りモードは急速に冷え込んだ。
正直、ベナムCFTC委員長による「イーサリアムは有価証券に該当しない」という発言のロジックは正確には伝わっていない。どういった背景からそのような判断をしているのかが不明なこともあり、ゲンスラーSEC委員長の一貫した主張の前には弱く映る。
日本は有価証券と暗号資産の整理が明確
仮にリップルやイーサリアムが有価証券であると米国金融当局が認めた場合、日本の当局は頭を抱える事だろう。日本では、暗号資産は有価証券として認められていない。つまり、株式や債券、手形、小切手と暗号資産は異なるとの整理だ。有価証券は手形などの貨幣証券、商品券などの物財証券、株式や債券などの資本証券の3種類が存在している。このような整理を行っている日本は、米国当局が「暗号資産の一部は有価証券である」と定義づけると非常に困ってしまう。恐らくは何かしらの米国当局への忖度から、有価証券と暗号資産の整理は変わるだろう。となれば、国内暗号資産交換業者がその暗号資産を取扱う際、金商一種業のライセンスが必要となり、一層厳格な利用者保護などの整備が走り出すかもしれない。
今のところ、暗号資産に対して強硬姿勢のSECとフレンドリーなCFTCという対立構図だが、そろそろ落としどころを見つけてほしいものだ。暗号資産時価総額2位のイーサリアムが有価証券という結論を出しても誰も得をしない。ゲンスラーSEC委員長の転向が待たれる。
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