裏切りの暗号資産の神、FTX破綻の代償は凄まじく大きい
暗号資産が激震に見舞われている。原因は創業3年で数兆円規模の暗号資産交換所FTXを作り上げ、業界関係者から「神様」扱いされていた人物による市場への背信行為だ。
アンバサダーに大谷翔平氏
FTXは「トレーダーによるトレーダーのための暗号資産交換所」というテーマで2019年にサム・バンクマン・フリードらによって設立された。ナスダック上場のコインベースの創業は2012年、現在世界最大の取引量を誇るバイナンスは同2017年であることから、FTXは次世代の暗号資産交換所という位置付けだった。そして、大リーグで活躍する大谷翔平氏やプロテニスプレイヤーの大坂なおみ氏がアンバサダーを務めるなどスポーツ界での広告・宣伝が目立っていた。好感度No.1の大谷氏が負った負のダメージは計り知れない。
「J.P.モルガン」と呼ばれたことも
FTXが追い詰められているという事実を知っていた関係者は少ないだろう。実際、11月上旬に財務面でのネガティブなニュースが出るまで私も知らなかった。むしろ5-6月にはアルゴリズム型ステーブルコインで瀕死の重傷を負った暗号資産関連企業に救いの手を差し伸べたFTXは、バイナンス、コインベースよりも財務基盤がしっかりしているとさえ思っていた。暗号資産業界では、サムのことをかつて証券会社を多く救った「J.P.モルガン(会社ではなく人物の方)」もしくは「神様」と呼ぶこともあった。バイナンスのチャンポン・ジャオ(CZ氏)よりも次の暗号資産業界を先導するのはサムである、という声も大きかった。
ポンジスキームの可能性
そんな「神様」が信じられない愚行を犯した。よりによって自身が経営している会社の融資の原資にFTXの顧客資産を充てたとのことだ。分別管理違反のレベルではなく、「ポンジスキーム」のような詐欺的なものとも考えられる。現在、FTXの所在地であるバハマでは法令に違反する行為がなかったかどうかの捜査が行われているようだ。
FTXは12日にようやくコールド・ウォレット管理?
日本の暗号資産交換業者は資金決済法において分別管理が義務付けられているのはもちろん、ほとんどの顧客資産がホット・ウォレット(インターネット管理)ではなく、コールド・ウォレット(オフライン状態)での管理を求められている。こうしたウォレット管理には2018年1月のコインチェック、同年9月のZaifにて発生したハッキング事件が大きく影響している。コールド・ウォレットで管理することによって利用者はスムーズな暗号資産送金ができなくなったが、その分セキュリティは高まった。FTXは12日に不正な取引が見られたため、全ての暗号資産をコールド・ウォレットに移管したと明らかにしているが、これだけの破綻劇を繰り広げて「ようやく」の対応だ。
どのような考えで顧客資産を融資の原資としたのかはこれから解明されていくだろう。しかしながらサムが犯した愚行の代償は大きい。暗号資産業界で「神様」的な扱いをされていた30歳の青年はそれ相応の罪を償うべきであるが、裏切られた我々暗号資産関係者の嘆きは早々癒されることはない。暗号資産価格への影響、暗号資産関連企業への影響、この一件を受けての規制強化など想像されるネガティブな事象は山積みだ。
サムには早い段階で真実を明らかにしてもらい、欺いたFTX利用者及び暗号資産関係者への言葉が欲しい。
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