「お遊び経営のFTX、マドフ事件並の金融事件に発展か」
先週、「裏切りの暗号資産の神、FTX破綻の代償は凄まじく大きい」というタイトルを寄稿したが、それから1週間でFTXの驚愕の実態が見え始めてきた。バイナンスの総帥であるチャンポン・ジャオ(CZ)氏がFTX救済の可能性を発表した1日後に、バイナンスが「FTXの流動性の問題は、当社の能力を超えている」と即座に打ち消した理由は「顧客資産の分別管理」ができない以外にもあった。
〇取締役会をやっていない?
ジョン・レイ新CEOが明らかにした事実として、
・FTXグループの多くは取締役会を開催したことがない
・サム・バンクマン・フリードは一定の時間がたつとメッセージが自動削除されるアプリを活用していた
・財務諸表の正確性に疑念
・経費申請を絵文字で承認するような杜撰な管理態勢
・銀行口座のリストは無く、残高を詳細に把握できていない
と散々である。まるで創業間もないスタートアップ企業が初めて監査法人による監査を受けた時のようなレベルだ。スタートアップ企業はこうした初々しい指摘を監査法人から受けて、然るべき会議の議事録を残したり、財務諸表を整えたり、意思決定を明確にしたり様々な改善を行い成長していく。資産規模数兆円の会社がこの状態であるというのは容易に信じられないが、サムを筆頭に数人がコントロールしていたという実態を紐解くと、こういったズブズブなガバナンスだったのかもしれない。
私自身、スタートアップの会社を経験した際、議事録を適切に残していない点を監査法人に指摘を受けたことがある。その際は事の重大性を認識していなかったが、ある程度経験していくと、事の重大さは容易に認識できた。また、メッセージが消えるアプリの存在を知っているが、私は使用することはなかった。後程、自分のメッセージを振り返ることができないアプリは、使用するに値しないという認識だ。ややこしい指示を示した際、証拠を隠滅するには使い勝手がいいのかもしれないが、この手のアプリを使用する考えは無かった。これだけの資産規模を有する企業のトップが、こうしたアプリの使用を奨励することは、異様である。こうしたジャッジをする土壌が普通にあるのであれば、投資家の資産を自身の会社に融資する考えも理解できる。サムは「経営」ではなく「お遊び」の範疇で全てをジャッジしていたのだろう。
〇2008年のマドフ事件の金融事件か?
サムが暗号資産業界の「J.P.モルガン」と呼ばれていたのは周知の事実だが、ジョン・レイ氏の指摘を見る限り、2019年の創業時からこのスタンスで経営したのだろう。ジョン・レイ氏も約20年前のエンロン破綻の処理を指揮して以降、またこうした指揮を執るとは思っていなかっただろう。
顧客資産を自身の関係会社に融資していたのであれば、明確な分別管理違反であり、その多くが不良債権化していることだろう。暗号資産交換所を運営することで利用者から資金を預かり、その資金を自身の関係する企業に融資していたとなれば、2008年12月に逮捕された元ナスダック・ストック・マーケット会長のマドフ氏(2021年死去、ネズミ講の被害総額650億ドル)に匹敵する金融事件に発展する可能性はある。捜査がFTXの本拠地であるバハマ当局なのか米国当局なのかで、捜査の温度差は出そうな感じだが、捜査の進展を見守りたい。
- 関連通貨:
関連記事
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:照葉 栗太
2023.09.23
ビットコイン分析『日米金融政策イベント通過に伴うアク抜け感から上昇トレンド再開に期待』(9/23朝)
今週は週央にかけて406.2万円(8/29以来、約3週間ぶり高値圏)まで持ち直すなど、ビットコイン円相場に復調の兆しが見えつつあります
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:山中 康司
2023.09.22
暗号資産週報「短期高値を見てやや下押ししやすい流れに」(9月第4週)
株式市場のリスクオフの動きがビットコインにも影響し、上げる前のもみあい水準に押しての週末となりました。
-
-
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:照葉 栗太
2022.11.19
ビットコインの価格分析:『FTXショックをトリガーに中長期下落トレンド入りの恐れも』(11/19)
暗号資産交換業大手FTXトレーディングのサプライズ経営破綻を背景に、11/14に、約2年ぶり安値となる221.0万円まで急落しました。