ブロックチェーン最前線3

DEX(デックス)という言葉をご存じだろうか。Decentralized Excangesの略で、日本語で言うと「分散型取引所」のことだ。

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ブロックチェーン最前線3

「DEXを通じて金融の未来像を考える」

前回、アフリカはルワンダ共和国において、「Mobile Money(モバイルマネー)」というモバイルウォレットサービスが普及しており、携帯電話のSMS機能を利用することで、銀行口座を持たずとも、送金、預金、引き出し、支払いが出来るサービスが確立していることに触れた。
この実例は、銀行という存在が無くても、お金のやりとりには別段、支障をきたさないことの何よりの証左になる。すでに銀行ビジネスが確立している先進国において、この技術が持ち込まれ、普及でもしたら、銀行は自らの立場が窮地に追い込まれることを分かっている。だから、P2Pでお金のやりとりが行われる技術の浸透には、恐らく積極的ではないし、それが先進国におけるテクノロジーの進化を遅らせる恐れがある。

ところでDEX(デックス)という言葉をご存じだろうか。Decentralized Excangesの略で、日本語で言うと「分散型取引所」のことだ。その逆はCentralized Excangesで、これは「中央集権型取引所」になる。ブロックチェーンは「分散型取引台帳」と言われるように、複数のノードによって、取引データを書き込んだブロックチェーンが保有されている。まさに、Decentralizedを具現化したものと言って良いだろう。
しかし、現在の仮想通貨取引所は、結局のところ、Centralizedな存在だ。日本の仮想通貨取引所であるビットフライヤーにしても、仮想通貨の不正流出で一躍有名になったコインチェックやザイフにしても、仮想通貨取引所自身に一定の信用力があるから、大勢の投資家がそこに集まって、仮想通貨の売買が行われる。

これは証券取引所も同じだ。東京証券取引所が信頼できる「場所」だからこそ、多くの企業はそこに株式を上場して資金調達を行おうとするし、一方で投資家は自分の大事な財産を投じて、株式を売買する。
ブロックチェーンという分散型の技術を用いておきながら、取引所は従来通り中央集権型のまま機能している点に、筆者は矛盾を感じざるを得ない。特定人物によって管理されている秘密鍵が、悪意を持った外部者によって盗まれ、ブロックチェーン上の取引情報にアクセスを許してしまうという、仮想通貨の不正流出事件は、中央集権型取引所だから起きたと考えられる。

これがDEXであれば、中央集権型取引所の問題はクリアされる。
DEXは「Excanges(取引所)」ではあるが、取引所が存在しない取引所のことだ。取引所は、売り注文と買い注文を一堂に集めて、これらを付け合わせ、売買を成立させていく場所だが、テクノロジーの進化によって、取引所のような場所が無くても、売りたい人と買いたい人を、リアルタイムで付け合わせることが、今ではもう十分に可能な段階まで来ている。これが実現すれば、いよいよ金融取引がP2Pで行えるようになる。

【DEXの世界観で広がる可能性】

DEXの世界観は、仮想通貨取引所だけでなく、銀行にもそのまま適用できる。
銀行の金融仲介機能は、銀行に一定の信用力があるからこそ、多くの人は自分の財産を預金に預けるわけだし、融資を受ける側はバカ高い金利を吹っかけられることなく、融資が受けられる。あるいは銀行だからこそ、安心して送金も任せられる。その代わり、利用者は銀行にかなりの手数料を払っている。
前回も触れたが、本支店の窓口で他行宛ての送金を行うと、送金額3万円以上で864円取られる。海外送金はもっと高くて、海外の他行向け送金にかかる手数料は5500円にもなる。もっと言えば、海外送金をした場合、複数の銀行を中継して送金されるため、送金先にいつ着金するか分からない場合もある。
そこで、ブロックチェーン技術を用いて、こうした金融取引をすべてP2Pで行えば、銀行に払っていた高額な手数料は必要なくなるし、送金にかかる時間も大幅に短縮できる。

ちなみに香港の銀行であるHSBCは、携帯電話の電話番号を使ったP2P送金を、顧客サービスとして提供している。それは、銀行にとって自己否定にもつながりそうなものだが、それでも銀行がサービスとして提供している事実を、私たちはしっかり認識しなければならない。
金融セクターにP2P取引が浸透すれば、さまざまな可能性が生まれてくる。

たとえば起債。
国内企業で社債を発行できるのは、おもに上場企業であり、その社債を買うのは大手機関投資家が中心だ。そして、証券会社が起債のコーディネートを行い、高額な手数料を取っている。債券を発行して資金調達する側と、その債券を購入して運用したい側を直接つなげれば、恐らく上場企業以外の企業にも社債発行による資金調達の道が開けるし、運用側は今の超低金利に甘んじることなく、資金調達側の信用力に応じた金利が得られるようになるだろう。

銀行にしても証券会社にしても、既存の金融機関は非常に大がかりなシステムを持ち、それを大勢の社員によって稼働させ、巨額な資本を持つことによって、自らの信用を保持している。だが、ブロックチェーンを通じて「繋ぐ」ことにより金融機能を代行できるなら、それを金融機関と言うかどうかは別の議論としても、新しい形の金融仲介会社が誕生するかも知れない。
もちろん抵抗勢力の壁は厚いだろうが、DEXという視点で金融市場を見ると、非常に大きな可能性があることに気付くだろう。

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