1. 直近1週間のBTC相場
今週(1/15−1/21)のビットコイン円相場は、週初267.9万円で寄り付いた後、(1)米FRBによる金融引き締め早期休止観測(インフレ指標および景況感指標の鈍化を背景に米FRBが金融引き締めスタンスを早期に緩めるとの思惑)や、(2)上記1を背景とした米長期金利の急低下とそれに伴う対主要通貨でのドル売り圧力(米ドルと逆相関性の強いビットコインに上昇圧力)、(3)暗号資産関連株の堅調推移(暗号資産取引所銘柄や暗号資産マイニング銘柄が軒並み急騰)、(4)アルトコインの堅調推移(イーサリアムやソラナ等、大半の暗号資産が急上昇→暗号資産市場全体に広がる楽観ムード)、(5)テクニカル的な地合いの強さ(対円相場の一目均衡表三役好転成立や、対ドル相場の心理的節目20000ドル突破)、(6)個人投資家で強まるFOMO(Fear of Missing Out=取り残される恐怖)の心理状態、(7)オプション市場のアップサイドを織り込む動き(リスクリバーサルのBTCコールオーバー急拡大)、(8)日銀による緩和修正見送り決定(日銀金融政策決定会合で現行政策の現状維持が決定→緩和修正を見込んでいた円ロング勢の大規模ロスカット発生→ドル円急騰→ビットコイン円連れ高)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値280.0万円(昨年11/8以来、約2ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(9)短期間で上昇した反動や、(10)対主要通貨での円買い再開(日銀金融政策決定会合後に急騰したドル円がわずか数時間で全値押し→ドル円急落→ビットコイン円連れ安)、(11)米コインベース・グローバル社による日本事業の停止発表、(12)米当局による国際的な暗号資産事業者に対する取り締まり措置発表、(13)暗号資産レンディング会社ジェネシス・グローバル・キャピタル社の破産申請の思惑、(14)欧米株の急反落(市場心理悪化)が重石となり、同日海外時間に、週間安値262.4万円まで下落する場面も見られました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(15)上記12で示した米当局による取り締まり対象企業がバイナンス社では無く、小規模暗号資産取引所のBitzlatoだったことに対する安堵感や、(16)ドル円相場の持ち直し(ドル円上昇→ビットコイン円連れ高)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間1/21午前3時20分現在)では、276.6万円前後まで持ち直す動きとなっております。
以下、テクニカル分析の観点でビットコイン円相場の先行きを考察いたします。
2. 移動平均線(テクニカル分析)
ビットコイン円相場は、最後の砦(レジスタンス)として意識されていた200日移動平均線をついに突破しました。EMA(指数平滑移動平均線)ベースでは、21日移動平均線と90日移動平均線のゴールデンクロスが実現するなど、強い売りシグナルを示唆する弱気のパーフェクトオーダー(下から順番に21日移動平均線、90日移動平均線、200日移動平均線が並ぶ状態)も消失しました。来週中には、SMA(単純移動平均線)ベースでも、弱気のパーフェクトオーダー消失が見込まれることから、テクニカル的に見て、地合いの更なる好転が期待されます。
3. ボリンジャーバンド(テクニカル分析)
ビットコイン円相場は引き続き、ボリンジャーミッドバンドの上側での推移が続いております。また、ミッドバンドの方向性も右肩上がりの傾斜を強めるなど、上昇トレンドの力強さが確認されます。強気のバンドウォーク(ローソク足がボリンジャーバンド上限に沿って上昇し続ける状態)は終了しましたが、戻り売り圧力は極めて弱く、逆張り勢の恐怖感が感じられます(ロスカットを燃料に大きく踏み上げられるリスクを孕んでいるため、逆張り勢がショートポジションを造成しづらい相場環境が継続)。また、バンド幅が拡大傾向を強めるなど、ボラティリティの更なる上昇が期待されます。ボラティリティの上昇は個人投資家フローを呼び込む効果があるため、相場をもう一段押し上げる一因となりそうです。
4. 一目均衡表(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の上昇を受けて、ローソク足は一目均衡表雲下限および雲上限を明確に突破しました。遅行線の26日前のローソク足突破や、転換線と基準線のゴールデンクロスと併せて、強い買いシグナルを示唆する「三役好転」が成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象づけるチャート形状となりつつあります。
5. RSI(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の急上昇を受けて、オシレータ系インジケータのRSI(日足ベース)は過熱感を示唆する70%ラインを大幅に上回る80%近辺で推移しています。但し、週足等の上位足のRSIは未だ50%近辺で推移するなど、過熱感(買われ過ぎ感)は生じておりません。現在のように上昇トレンドの開始局面においては、下位足(240分足や日足)での過熱感よりも、上位足(週足)での過熱感が重要視される傾向にある為、上位足で過熱感が点灯するまでは、オシレータ系インジケータに基づく安易な逆張り(ショートエントリー)は避けた方が無難であると考えられます(素直に上昇トレンドに乗っかる1番・2番バス投資家が多いフェーズ)。
6. まとめ
ビットコイン円相場は、昨年12/30に記録した約2年ぶり安値215.6万円をボトムに反発に転じると、今週半ばにかけて、約2ヵ月ぶり高値となる280.0万円まで急伸しました(わずか3週間で約30%の上昇率)。この間、ローソク足が短・中・長期移動平均線の全てを上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」も成立し、更にはFTXショック後の下げ幅の全値戻しも達成するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつあります(暗号資産オプション市場でもリスクリバーサルがBTCコールオーバー方向に急拡大するなど、アップサイドを織り込む動きが継続中)。
FTXトレーディング破綻の余波継続(今週は暗号資産レンディング会社ジェネシス・グローバル・キャピタル社が経営破綻)や、世界的な規制強化の思惑、暗号資産関連事業者の撤退加速(昨年末のクラーケンジャパンの日本事業撤退に続いて、今週は米コインベースも日本事業撤退を発表)など、依然としてファンダメンタルズ的な悪材料は残っていますが、ひとたび勢いづいた暗号資産市場は、個人投資家によるFOMOの心理状態を支えにワンウェイに進んでいく傾向が強いため、もう暫く「お祭り相場」が続く公算が大きいと判断できます。事実、ここ数日は伝統的金融市場との相関性が弱まるなど(欧米株が急落しても暗号資産市場が崩れない状態)、暗号資産が独り勝ちの状態となりつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、ビットコイン円相場の短期的な上昇をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(BTCJPY): 250.0万円−300.0万円
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