NFT取扱いを国税庁が発表、ハッキングは雑損控除の対象に
ビットコインはドルベースで23000ドル台、イーサリアムは同じく1600ドル台と、先週の日銀会合の結果発表後もじりじりと上昇している。私は『「日銀トレード」解消で日銀会合後は上昇一服』を想定していたが、見事に否定される強い動きだ(自分のなかでは悪い想定が否定されたので良しとしている)。仮にドル・円が昨年10月の150円水準であれば、ビットコインは345万円、イーサリアムは24万円とそれぞれ昨年11月以前の水準まで戻している計算だ。足元のドル独歩高のアンワインド(売りに対する反対売買)が上昇の要因と考えているため、150円水準の話を例に挙げるのはおかしな話だが、ドルベースのビットコインは昨年8月水準、イーサリアムは昨年9月水準までそれぞれ値を戻しており、市場ムードは良好と言えよう。
国税庁は「NFTに関する税務上の取扱いについて(情報)」を発表
さて、このまま価格の話をしたいところだが、今回はNFT(非代替性トークン)の税制に関するお話を紹介したい。
先週1月13日、国税庁がNFTに関する税務上の一般的な取り扱いに関する「NFTに関する税務上の取扱いについて(情報)」を発表した。具体的な15事例(所得税・法人税、相続税・贈与税、源泉所得税、消費税、財産債務調書など)に対する回答と解説、関係法令が掲載されている。
例えば、問8にある「国内外で流行するブロックチェーンゲーム取引の(損益計算)について」は、「ゲーム内通貨(トークン)の取得や使用が頻繁に行われ、取引の都度評価は煩雑」と回答しており、ゲーム内通貨(トークン)基準で所得金額を計算し、年末に一括で評価する『簡便法』の雑所得計算が認められている。また、同じ問8にある「ブロックチェーンゲームで得た報酬について」に対しては、原則として雑所得に区分され、所得税の課税対象となると説明している。ただし、報酬として得たゲーム内トークンが、ゲーム内でしか使用できない場合、つまりゲームの外で資産と交換できない場合には、課税対象とはみなされないと指摘。この辺りの整理は、資金決済法にある「暗号資産が他の資産と交換可能かどうか」の考えに近しいと感じる。
「第三者の不正アクセスにより購入したNFTが消失した場合」の回答は?
そして、今回の15質問のなかで最も気になった事例は、問5の「第三者の不正アクセスにより購入したNFTが消失した場合」である。これまで明確にされていなかった内容が今回事例として挙がった。国税局の回答は下記の通りである。
・そのNFTが生活に通常必要でない資産や事業用資産等に該当せず、かつ、そのNFTの消失が、盗難等に該当する場合には、雑損控除の対象となります。
・そのNFTが事業用資産等に該当する場合には、その損失について、事業所得又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます
つまり、「雑損控除などの対象になる」ことを認めた。実は、国税局は暗号資産の盗難・消失に関する見解はまだ発表しておらず、市場関係者や税理士は「恐らく雑損控除となるだろう」の理解だった。推測だが、今回の国税局の見解を受けて、暗号資産も同等の扱い(雑損控除などの対象)になるのではないかと考える。当然、個別の事例ごとに国税局への確認は必要だが、暗号資産ハッキングが発生した際の一定のベンチマークになると感じた。
NFT市場の成長性は長い目が必要
なお、国税局は、あくまでも一般的な取扱いについての回答としており「個々の具体的な取引については、回答と異なる取扱いになる場合がある」といったいつも通りのエクスキューズを今回の発表でも行っている。まだまだ事例が少ないため、今後も追加のFAQが発表されるはずだが、Web3.0を成長戦略に掲げる岸田政権としては、アート、住民票、チケットなど様々な用途が考えられるNFTの活性化はマストだろう。私もついつい上場企業が発表している決算短信のNFT事業の伸び悩みに目がいってしまい「成長性は大丈夫か?」と考えてしまいがちだ。四半期ベースの目先ではなく、1年、2年のNFT市場の成長性は目先ではなく、長い目で見ていかなくてはならない。
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