バイナンスが日本で始動開始、どのようなビジネスプランを展開するか?
2023年の国内暗号資産交換業界は、新旧入り乱れの勢力争いが起こりそうな予感がする。国内暗号資産業者のガリバー的な存在であるbitFlyerでは、創業者の一人である加納裕三氏が代表取締役社長に復権しようとしている。また、2月21日から出金を再開したFTX Japanの入札結果もそろそろ出るころだ。今のところ入札に関するニュースはほとんど伝わっていないが、資産超過の案件を取得し日本市場参入のきっかけを掴みたいとする海外暗号資産交換所は少なからずいることだろう(規制の高いハードルに面食らう可能性はあるが)。
バイナンスも動き出す
そして、サクラエクスチェンジビットコイン(SEBC)も新たな展開に動き出した。SEBCのおさらいだが、同社は暗号資産交換所の運営ではなく、暗号資産の取次業を展開していた。昨年11月、SEBCは全株式をBinance Holdings Limitedに譲渡し、バイナンスが日本で暗号資産交換業のライセンスを取得する企業を保有した。代表取締役には、元クラーケン・ジャパンを運営していたPayward Asiaの代表を務めていた千野剛司氏が就任。クラーケンが今年1月末に日本市場から撤退したことを考慮すると、昨年、クラーケン代表を退任していた千野氏の動きはさすがだ。
収益細る交換所サービスに参入か?
そのSEBCは、2月1日、同社が手掛ける暗号資産積立サービス「積立ましーた」の提供終了を発表した。最終購入日は4月で、5月中に一括で取次資産への振り替えを実施するとのこと。ユーザーに代わって暗号資産の注文を行う取次所サービスは継続するが、「サービス全体の改善に経営資源を集中する」とある以上、世界の暗号資産交換所のガリバーであるバイナンスが、取次所サービスだけで満足するわけはないだろう。国内暗号資産交換所が行っている「取引所」「販売所」「暗号資産デリバティブ」「レンディング(ステーキング)」辺りは、一般的なサービスとして行うと推測する。
一方、国内暗号資産交換業者は、これらのサービスから得られる収益が大幅に細っている。クラーケンやコインベースはこうした事情を鑑みて、日本市場から撤退したはずだ。となれば、収益にドライな外国企業であるバイナンスが、稼いでいない他の交換業者と同じサービスを行うというのは考えにくい。とはいえ、規制や法律に厳しい日本で、暗号資産交換業というライセンスに紐づいたビジネスを行うとした場合、これらのサービス以外で一体何ができるのだろうか?
暗号資産カストディ業務の成長性を示すレポート
私は、他の業者がさほど行っていないライセンス範囲内のサービスとして、暗号資産カストディ業務が気になっている。金融機関が行っているカストディ業務とほぼ同じで、「他人のために暗号資産の保管・管理を行う」サービスである。今年1月、金融機関のバーンスタインがレポートで、「カストディアンの収益機会は現在の3億ドルから80億ドルに成長する可能性がある」と述べた。80億ドルという小さい市場ではあるが、レポート内では機関投資家の利用が今後増えるという予測だ。
確かに、暗号資産を交換所やウォレットなどで保管する場合、ハッキングや秘密鍵の消失などのリスクは常に生じる。セキュリティが高くより安全なウォレットサービス=暗号資産カストディであることを考えると、機関投資家だけではなく個人投資家からも一定のニーズはあると考える。もちろん年間のコストとセキュリティの高さのバランスにはなるだろうが、暗号資産カストディ業務を積極的に行っている国内暗号資産交換業者がいない状況下、検討の余地はあるのではないだろうか。業界のガリバーが差し障りのないサービスをスタートさせるのか、「そこ?」というサービスを開始するのか。バイナンスの続報に注目である。
- 関連通貨:
関連記事
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:照葉 栗太
2023.09.23
ビットコイン分析『日米金融政策イベント通過に伴うアク抜け感から上昇トレンド再開に期待』(9/23朝)
今週は週央にかけて406.2万円(8/29以来、約3週間ぶり高値圏)まで持ち直すなど、ビットコイン円相場に復調の兆しが見えつつあります
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:山中 康司
2023.09.22
暗号資産週報「短期高値を見てやや下押ししやすい流れに」(9月第4週)
株式市場のリスクオフの動きがビットコインにも影響し、上げる前のもみあい水準に押しての週末となりました。
-
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:照葉 栗太
2023.03.01
ビットコイン円、伝統的金融市場のリスクオフ再開を受けて反落。続落リスクに要警戒(3/1朝)
28日(火)のビットコイン円相場は上昇後に反落。
-