1. 直近1週間のBTC相場
今週(3/6−3/10)のビットコイン円相場は、週初305.3万円で寄り付いた後、早々に週間高値307.6万円まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)米証券取引委員会(SEC)の弁護士であるウィリアム・アプテグローブ氏による「バイナンスUS社によるVGXトークン販売は証券法違反」とのネガティブ発言や、(2)パウエルFRB議長による「正当化されるなら利上げスピードを加速させる用意がある」「最終的な金利水準は以前の予想よりも高くなる可能性が高い」との議会証言でのタカ派発言、(3)米FRBによる金融引き締め再加速観測、(4)米シルバーゲート・キャピタル社によるシルバーゲート銀行の事業清算決定(暗号資産関連事業者の預金受け入れや投資家向けドル決済システムを提供するなど、暗号資産業界の発展に大きく貢献してきたシンボル的な銀行の清算)、(5)上記4を背景とした暗号資産業界に広がる信用不安、
(6)バーFRB副議長による「ガードレールが必要」との規制強化を滲ませる発言、(7)米シリコンバレーバンク(SVB)の持ち株会社SVBファイナンシャル・グループの経営難に端を発した伝統的金融市場のリスク回避ムード(VIX急上昇→投資家のリスク許容度低下→ビットコイン下落)、(8)ロング勢の大規模ロスカット(フィボナッチ38.2%押し、半値押しの下方ブレイク)、(9)オプション勢のショートガンマ操作(20000ドルを割り込んだことでオプション市場がショートガンマゾーンへ突入)が重石となり、週末にかけて、1/19以来、約1カ月半ぶり安値となる266.0万円まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間3/11午前6時10分現在)では、269.9万円前後で推移しております。
2. 移動平均線(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の急落を受けて、日足ローソク足は、21日移動平均線(青線)、50日移動平均線(黒線)、90日移動平均線(緑線)、200日移動平均線(赤線)の全てを下方ブレイクしました。90日移動平均線と200日移動平均線のゴールデンクロスを経て、強気のパーフェクトオーダーが成立したものの、地合いは弱いと判断できます。
3. ボリンジャーバンド(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の急落を受けて、日足ローソク足は、ボリンジャーミッドバンドを下抜けしました。また、強い下落トレンド入りを示唆する弱気のバンドウォーク(ローソク足がボリンジャーバンド下限に沿って下落し続ける状態)も点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
4. 一目均衡表(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の急落を受けて、日足ローソク足は一目均衡表転換線、基準線、雲上限を下抜けしました。また、これまで上昇トレンドを支えてきた、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」も消失しました。足元はひとまず一目均衡表雲下限がサポートとして機能しているものの、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
5. RSI(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の急落を受けて、日足RSIは、過熱感(売られ過ぎ感)を示唆する30%割れの水準へと低下しました。4時間足や1時間足などの下位足でも過熱感(売られ過ぎ感)が出ているため、目先は逆張り勢によるロングエントリーや、中長期筋による押し目買い、短期筋によるショートカバーに警戒が必要と考えられます。
6. まとめ
ビットコイン円相場は、2/21に記録した年初来高値339.9万円をトップに反落に転じると、週末にかけて、一時266.0万円(本年1/19以来、約1カ月半ぶり安値圏)まで急落しました。この間、主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や200日移動平均線、一目均衡表雲上限、対円の節目300.0万円や対ドルの節目20000ドル)を軒並み下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」や「ダウ理論の上昇トレンド」も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化が警戒されます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め再加速の思惑や、(2)上記1を背景とした米経済のハードランディング懸念(実質金利上昇に伴う実体経済のオーバーキルリスク)、(3)世界的な規制強化の思惑(今週は米司法省が暗号資産取引所KuCoinを提訴。今年に入ってから米国による規制強化が活発化)、(4)米シルバーゲート銀行の事業清算(FTXショックの余波継続→暗号資産界隈にとってのシンボル的な銀行の事業清算→信用不安への警戒感)、(5)米国の課税強化懸念(バイデン米大統領は3/9の「予算教書」の中で、暗号資産の年末の節税目的トレードを控除非対象にする案や、マイニング事業の電気代に関する課税案などを発表)など、ビットコイン円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
事実、暗号資産オプション市場ではインプライドボラティリティが高騰すると共に、リスクリバーサルもBTCプットオーバーが急拡大するなど、ダウンサイドを織り込む動きが進んでいます(20000ドルより下側は巨大ショートガンマエリア→ビットコイン価格が下がれば下がるほどオプション勢によるストップSELLが出てくるポジション構造)。以上を踏まえ、当方ではビットコイン円相場の続落を来週のメインシナリオとして予想いたします(来週3/14に予定されている米2月CPIを終えるまでは下落基調が続くと予想)。
来週の予想レンジ(BTCJPY): 250.0万円−300.0万円
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