あっという間に米銀行3行が破綻、ようやく暗号資産は「陰の極」を迎えたか?
先週、「破綻危機のシルバーゲート、急落していても株価はまだ5ドル台」を書いたが、あっという間にシルバーゲートキャピタルが逝ってしまった。それどころか、同じように暗号資産関連企業とつながりが深かったシグネチャー・バンクも事業停止。テック企業とのつながりが深かった全米16位の資産規模(2022年12月31日時点で約2090億ドル)であるシリコンバレーバンクも破綻した。株式市場や為替、債券市場は米金利先高観が急激に低下したこともあり乱高下している。一方、我らが暗号資産は一時急落した後、「往って来い」を見せた。今時点で判断するには時期尚早だが、昨年5月以降発生した暗号資産関連企業の破綻及び事業閉鎖は、本丸ともいえる銀行が倒れたことによって「陰の極」を迎えたのかもしれない。
シグネチャー・バンクも暗号資産特化銀行
シグネチャー・バンクはニューヨーク州認可の商業銀行で、昨年末の総資産は1103億ドルと全米29位の銀行である。シルバーゲートキャピタル同様、暗号資産関連企業の取引が多く、昨年11月のFTXグローバル破綻時には、危ない銀行の一つとして名前が挙がっていた。順番としては、シルバーゲートキャピタルが自主精算に動いたことから、SNSなどでネガティブな情報が拡散し預金引き出し、つまり信用不安に伴う取付騒ぎが発生したことから事業を停止せざる得ない状況に陥ったわけだ。
一方、シリコンバレーバンクは、3月8日に210億ドルの有価証券を売却して18億ドルの損失を計上し、22億ドル規模の増資計画を発表していた。ただ、この発表が裏目に出てしまい、シルバーゲートキャピタル同様、SNS上で取付騒ぎが発生。シリコンバレーバンクを救済する金融機関は見つからなかったことから、増資発表から僅か2日後の10日、米連邦預金保険公社(FDIC)は同銀行を管理下に置いた。同銀行は暗号資産に特化していたわけではないが、スタートアップ企業などイノベーション企業に傾斜していたことから、今回破綻した3行は「金利上昇時に弱い暗号資産関連企業に特化した銀行」という整理である。そのため、他の銀行に対する金利上昇による債券価格下落の影響は、限定的との見方だ。
ただのドル安に対する暗号資産買いかも?
こうした暗号資産関連企業と深い取引関係がある金融機関が3行も破綻したことで、さすがに暗号資産は総じて急落となったが、既にビットコインを筆頭にほぼ急落前の水準まで値を戻している。ステーブルコインなどへの影響は限定的だったことなどから、「昨年5月のLUNAショック再来か?」といった過度な警戒感は後退。ドル売りに対する暗号資産買いという「負の相関関係」というパワーバランスが働いただけかもしれないが、超リスク資産である暗号資産がしっかりとしているのは非常に心強い。
もしかすると、昨年5月以降、暗号資産関係者の間でずっと名前が挙がっていたシルバーゲートキャピタルとシグネチャー・バンクの2行が破綻したことで「悪材料出尽くし感」が意識された可能性はあろう。破綻した3行が融資していた暗号資産関連企業の連鎖破綻の可能性は残っているものの、潰れかけのゾンビ企業がようやく淘汰されたことで、既に先を見据えた動きが始まっているのかもしれない。
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