「暗号資産はリスク資産で独り勝ち!パウエルFRB議長がマエストロとなるか?」(23/3/21)

ビットコイン、イーサリアムは、昨年6月以来の水準まで値を戻しており、暗号資産市場全体の時価総額も1.2兆ドルほどまで回復している。

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「暗号資産はリスク資産で独り勝ち!パウエルFRB議長がマエストロとなるか?」(23/3/21)

「暗号資産はリスク資産で独り勝ち!パウエルFRB議長がマエストロとなるか?」

ビットコイン、イーサリアムは、昨年6月以来の水準まで値を戻しており、暗号資産市場全体の時価総額も1.2兆ドルほどまで回復している(Coin Market Cap、3月21日16時時点)。暗号資産だけを見ると「リスクオン」という地合いに見えるが、株式、為替、債券など伝統的な金融市場はかなり厳しい状況だ。あの欧州大手金融グループのクレディ・スイスグループ(CSグループ)が、同じく欧州大手金融グループのUBSに救済買収されるという事態は驚きの一言に尽きる。

〇世界屈指の金融グループのクレディ・スイスが・・・

CSグループといえば、米国の名門投資銀行であるファースト・ボストンを飲み込むなど、世界屈指の金融グループである。過去、銀行員時代に仕事上で付き合いがあったCSグループの方々は、皆揃いもそろって語学堪能、交渉上手の切れ者ぞろいといった印象だ。国内では投資銀行業務のほか、プライベートバンキング業務を展開しており、「日本のPB業務では、CSグループが最も敷居が高い」という話を聞いたことがある。同社のPBサービスを受けるためには、たしか10億円以上の預かりが必要だったと記憶している。

CSグループは、金融安定理事会(FSB)が指定する「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)」リスト2022年に名を連ねている。このリストには、日本の三菱UFJなどメガバンク3行のほか、米国ではゴールドマン・サックス、JPモルガン、シティグループ、欧州では、ドイツ銀行、HSBC、バークレイズ、BNPパリバ、UBSなど30行がピックアップされており、それぞれ決められた割合を資本に積み増す必要がある。CSグループは、1%の資本積み増しが義務付けられる世界屈指の金融グループだが、リスク管理の甘さや内部の不正等に伴う顧客及び株主からの信用失墜を経て、今回、UBS(CSグループ同様1%の資本積み増しのカテゴリーに属する)に飲み込まれた。

〇金融機関の破綻は金融システムの麻痺の元

3月に入って、シルバーゲートキャピタル、シリコンバレー・バンク、シグネチャー・バンク、CSグループと4つの金融機関が経営破綻もしくは自主精算、救済買収等で消えていった。資金の出し手である銀行の破綻は金融システムの麻痺を連想させることから、市場は「次はあそこだ」「あそこはヤバい債券管理をしている」といったうわさが先行し、疑心暗鬼に陥る。当然、先行き不透明感の高まりから、ヘッジのためのオプション取引が増加することで、恐怖指数ともいわれるVIX指数や日経VIは跳ね上がる。VIX指数上昇によって、ヘッジファンドなどはポジションの手仕舞いに追いやられ、自ずと現金比率が高まる。そして、市場が落ち着くまで投資家の様子見ムードは強まることとなる。現在の株式や為替、債券市場はまさにこの状況だ。少なくても、東京時間3月23日未明に発表される、米連邦公開市場委員会(FOMC)による政策金利引き上げの幅、頻度及びパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による発言内容を確認するまでは、伝統的な金融市場に新たな資金は流入しないだろう。

〇パウエルFRB議長の発言に注目

相次ぐ銀行破綻を受けて、パウエルFRB議長がこれまでの「タカ派」路線を転換するとの観測はある一方、「タカ派」への路線転換は、パウエルFRB議長の路線が誤っていたとみなされる可能性がある。「誤り」は認めたくないが、「インフレ退治」をしなくてはならないし、金融システムの安定化も図る必要がある。常人であれば胃に穴が開きそうな舵取りだ。

今は、FOMC開催直前でブラックアウト期間のため、FOMC関係者の声が一切聞かれない。こうした状況も、市場が必要以上に動揺した要因となったかもしれない。今回の金融不安が、これまで発生してきた「1998年、ロシア金融危機」「2008年-09年、サブプライムショック」や「2010年―12年、欧州債務危機」「2020年、コロナショック」レベルのインパクトになるかどうかは、パウエルFRB議長がグリーンスパン元FRB議長のような「マエストロ」となり得るかどうかにかかっている。

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