「顧客保護」強まる、5月の広島サミットまでに規制推進の動き
昨年11月に大手暗号資産交換所のFTXトレーディング(以下、FTX)が経営破綻して以降、米国を中心に暗号資産の規制推進の話は既定路線となっている。「規制を強化するとイノベーションが遅れる」などといった声は聞かれる一方、米国でFTXのサービスを受けていた利用者は口座凍結など資産に対する実害を受けていることから、規制推進は不可避の状況である。
そんななか、主要7か国首脳会議(G7)が連帯して暗号資産の規制推進に乗り出すとの話が伝わった。暗号資産の法規制を早い段階で進めた日本が旗振り役となって、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国とともに、今年5月に広島で開催される首脳会議での首脳宣言への反映を目指すとのことだ。その手前で開催されるG7財務相・中央銀行総裁会議での合意を経て、広島サミットでの宣言につなげる算段である。
日本は法規制のパイオニア的存在
日本は2014年に発生したMt.Gox事件をきっかけに法規制の必要性が議論されて、2017年4月、世界に先駆けて暗号資産を規制する資金決済法がスタートした。その後、「顧客保護を優先するためにレバレッジ上限を2倍まで引き下げたことで、トレードが面白くなくなった」、「自主規制団体の手が回っていないため、国内で売買できる暗号資産の種類が少ない」といったネガティブな話題が先行し、「資金決済法」を「非」とするような雰囲気があった。
その空気が一変したのが、FTXの経営破綻である。サービス利用者が多かった米国を中心に口座凍結などの直接的な影響を受けたほか、FTXが発行していた暗号資産のFTXトークン(FTT)の価値が暴落したことで、資産が棄損した利用者も多い。右往左往する海外利用者をよそに、日本では、監督当局である金融庁が、FTXの100%子会社で暗号資産交換業サービスを日本で手掛けるFTX Japanに対して、「日本の投資家の資産を国外に流出させるな」といった内容の行政処分(業務改善命令及び業務停止命令)を出している。この発令は、FTXが破産申請を行う直前というスピード感であった。
今年2月下旬、FTX Japanは出金・出庫サービスを再開しており、再開後の1か月少しで約213億円の法定通貨と暗号資産が出金または出庫されている(3月22日開示情報)。FTX Japanの入札結果もそろそろ出てくる頃合いとのことで、国内のFTX関連事業は資金決済法や自主規制ルールなど関係法令等に則って粛々と行われている印象だ。国内の顧客の資産は分別保管がマストとしていることから保全されており適切な管理は行われていた。
厳しい規制で助かった日本の投資家たち
厳しい資金決済法は国内で賛否両論だったが、FTXの経営破綻を受けて、世界的に「是」とする雰囲気が強まっている。コスト増加によって国内暗号資産交換業者の経営は厳しくなっているが、顧客保護は世界的なコモンセンスとなっていくのだろう。つまり「企業利益やイノベーションよりも顧客保護を最優先に考える」という世界だ。旗振り役の日本が「暗号資産の顧客保護」という観点では、世界の最先端であることは間違いない。ある意味、日本らしいと言えば日本らしい。
欧州は既に規制推進の議論が強まっており、「放任主義」だった米国は、米国証券取引委員会(SEC)が忙しく動き出している。広島サミットが開催されるのは5月19日から21日だ。すでに2か月切っているスケジュール下、どこまでG7までに議論が醸成されるのか注目である。
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