上海アップデート後も上値の重いイーサリアム?
ビットコインは2022年6月以来となる30,000ドル台をつけた。3月に欧米金融システム不安が発生して以降、リスク回避の資金及びリスク選好の資金といった相反する資金を取り込み、暗号資産は総じて上昇。方向性に乏しい先進国の株式市場をよそに、暗号資産市場はモメンタム良好な地合いが継続している。
一方、時価総額2位のイーサリアム(日本時間4月11日13時時点のCoin Market Cap)も堅調に推移しているが、まだ2022年8月の2,000ドル台をクリアできていない。上値の重い原因はある程度わかっている。「上海アップデート」である。
「上海アップデート」のざっくり内容
イーサリアムは度重なるアップデートをこれまで行っており、今回もその一環である。2022年にコンセンサスアルゴリズム(ブロックチェーン上の承認システム)をこれまでのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からエネルギー消費量が少ないプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に変更。この時の大型アップデートでは、イーサリアムがハードフォークし、PoWを維持するため、イーサリアムPoW、イーサリアムFairが誕生した。
今回の「上海アップデート」では、これまでイーサリアムをステーキングした利用者が、ステーキングしたコインと獲得した報酬を引き出せる状況となる。つまり2年近くステーキングとしてロックされていたイーサリアムが出金可能となるわけなのだが、ざっくりイーサリアムの時価総額で10%少しの金額(日本円換算では約3兆円)だ。バリデータ(ブロックチェーンに記録されるデータの妥当性を検証するノードのこと、承認者とほぼ同意)が分散型ネットワークの安全性を担保するため、1日あたりの出金制限が設けられている。最短で1年ほどかかるとの見込みだが、それなりの売り圧力となるだろう。
一定期間の売り需要と想定
データベースを分割することで負荷を軽減する「シャーディング」という技術を2023年中にアップデートする見込みのため、一部では、今回の「上海アップデート」はさほど売り圧力にはならないとのコメントも見られる。とはいえ、「シャーディング」は、今回の「上海アップデート」から半年後に実装される予定なので、今しばらくはイーサリアムの一定の売り圧力となると考えるのが、株式市場経験者の意見である。
イーサリアムは上値の重い展開に
極力難しい用語を削って説明したため、暗号資産及び株式の専門家から「説明が大雑把すぎる」とお𠮟りを受ける内容かもしれない。ただ、それなりの売り需要が容易に想像できるイーサリアムは、ビットコインなど時価総額が大きい暗号資産と比較すると相対的に弱含むのは仕方ない。2023年1月1日から4月11日までのビットコインとイーサリアムの相関は「0.97」とほぼ「=」の関係性がある。欧米金融システム発生時の3月9日から4月11日に限定しても「0.95」とこれもほぼ「=」の関係性だが、この期間の上昇率は、ビットコインが+48%なのに対して、イーサリアムは+33%に留まっている。この上値の重さの要因を「上海アップデート」以降に想像される「売り需要」と考えるのは筋違いでは無いはずだ。総括すると、「シャーディング」が実装される予定の10月頃まで、イーサリアムはビットコインよりも相対的に弱含む展開となるだろう。
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