史上最高値更新のアルゼンチンペソベースBTC、背景には厳しい経済情勢(23/4/28)

世界に目を向けてみると、ビットコインが既に史上最高値を直近で更新した通貨(国)があった。

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史上最高値更新のアルゼンチンペソベースBTC、背景には厳しい経済情勢(23/4/28)

史上最高値更新のアルゼンチンペソベースBTC、背景には厳しい経済情勢

30,000ドルの節目を割り込んでいたビットコインは、米ファースト・リパブリック・バンク(FRC)のネガティブニュースを受けて、代替資産先としての見直しが入り30,000ドルを奪還した。まさにデジタル・ゴールドの動きを見せているが、世界に目を向けてみると、ビットコインが既に史上最高値を直近で更新した通貨(国)があった。南米のアルゼンチンである。

アルゼンチンペソ(ARS)ベースのビットコインは、4月27日に640万ARSで推移している。日本円やドルベース同様、2021年11月にこれまでの高値(645.5万ARS)をつけた後は低迷していたが、2023年に入って急騰し、4月18日には659万ARSと史上最高値を更新した。

9回のデフォルトを経験しているアルゼンチン

ドルベースのビットコインは、2023年1月1日の16,472ドルと比べると2倍弱上昇したが、ARSベースでは、同日の297万ARSと比較すると2.2倍だ。この差を生み出しているのが、ARS安であることは一目瞭然である。実際、年始からARSはドルに対して、0.0056ドルから0.0045ドルまで価値が下落したが、そもそも、この下落は2003年の0.36ドルから続いている。さすがこれまで9回のデフォルト(債務不履行)状態を経験している国の通貨といったところだ。こうした自国通貨に対する信頼感の無さも根底にあることから、アルゼンチン国内ではビットコインを筆頭に暗号資産の利用頻度が年々高まっている。

暗号資産に前向きなアルゼンチン

2022年12月、アルゼンチンのサン・ルイス州にて、ドルに連動するステーブルコイン「サン・ルイスデジタル貯蓄資産」の発行を認める法案が可決された。また、2023年には、アルゼンチン証券監督当局がMatba Rofex取引所(アルゼンチンの先物取引所)で、ビットコイン先物取引を承認したほか、暗号資産取引所のガリバーであるバイナンスは、ARSで暗号資産を直接売買できるサービスをアルゼンチン国内で拡大すると発表するなど、暗号資産に関する前向きなニュースが相次いだ。自国通貨が安定していれば、こうしたニュースに対する批判的な声が保守派からあがるだろうが、アルゼンチン国内ではそのような声はほとんど上がっていないようだ。

以前、ジンバブエ国内でのビットコインの使用頻度が突出しているとのニュースを見たが、アルゼンチン国内で起こっていることはジンバブエとまるで同じだ。銀行口座を持たず、自国通貨に対する信頼も乏しい状況下、既存通貨の代替資産として暗号資産の使用頻度が高まるのは当然だ。ドルベースのビットコインの価格だけ見ていては、まるで見えてこない壮絶な経済状態の姿が、ARSベースのビットコイン高騰から垣間見える。

そして、ビットコインを法定通貨化したエルサルバドルや、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency(CBDC))を導入した中央アメリカ諸国などの国々が「なぜそのような道を選択したのか」「そもそも選択するしか道がなかった」という事実を理解する必要もある。

日本銀行は、2020年10月に公表した「中央銀行デジタル通貨に対する日本銀行の取り組み方針」に基づき、2021年4月からCBDCの実証実験を進めている。現状、日本国内での導入に関しては「現時点で決まっておらず、今後の国民的な議論の中で決定されるべきもの」という姿勢を示している。

日銀には、日本国内での導入以外にも他国への導入を検討してほしい。ODAの一環とまですると仰々しい話にはなってしまうが、経済的や金融インフラの構築などに苦しんでいる国に対して、日銀が実証実験で培った結果をベースにCBDC導入をともに検討していくといった手は打てないものだろうか。国際通貨基金(IMF)や世界銀行などを敵に回す可能性があるので簡単には決断できないことではあるが、民間企業のソラミツが東南アジア諸国と進めているプロジェクトに日銀も参画するようなアグレッシブな動きは見てみたい。

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