老舗Bittrexが破綻、同年設立のコインベースは5四半期連続最終赤字だが株価上昇
暗号資産業界の老舗がまた一社ひっそり逝った。ビットコイン黎明期でもある2012年に設立されたBittrexが、米裁判所に日本の民事再生法にあたる連邦破産法11条(チャプター11)を申請した。
提出された裁判所資料によると、資産と負債の規模はともに5億-10億ドルで、債権者は10万人とのことだ。既に4月30日付で米国内での業務は停止しており、現在は4月末までに引き出しされなかった顧客の暗号資産を引き続き保有している。同社は、先月、米証券取引委員会(SEC)から、未登録で証券取引所を運営している、と提訴されていた。米国外の顧客を対象とした「Bittrex Global」は事業を継続するとしているが、影響は少なからずあるだろう。
かつて米ドルベースで2割超のシェアを誇ったBittrex
同社は今でこそ、Coin Market Capのスポット取引の取引所ランキングで57位に入るレベル(2023年5月9日17時時点)だが、2018年の米ドルベースのシェアは22%と非常に高く、古くからビットコインに携わっている人は必ず聞いたことがある交換所の一つだ。2012年に設立された交換所は、コインベース、Bitfinex、コインチェック辺りである。残っている大手暗号資産交換所でBittrexより古いのは、2011年設立のクラーケンぐらいだろう。ちなみに圧倒的なガリバーの地位を築いたバイナンスの設立は2017年、金融庁から2回目の警告を受けたBybitは2018年、昨年壮絶な最期を迎えたFTXは2019年設立である。暗号資産業界の回転の速さは、まさに栄枯盛衰といったところか。
最大の債権者は米国政府機関
Bittrex破綻の直接的な原因は前述の通りSECによる提訴だったと考えるが、そもそも昨年10月に米財務省の外国資産管理局(OFAC)と金融犯罪取締ネットワークから銀行秘密法違反の訴因を受けた際の和解金2900万ドルを8割ほど支払っていないまま破綻したことから、遅かれ早かれ、といった状況だったのだろう。同社は証拠金取引サービスを一切やらずスポット取引のみの交換所だった。バイナンスのような最大で10倍のレバレッジ取引ができるような交換所にレバレッジを好むユーザーは流れたのだろう。なお、破産申請書では、このOFACが最大の債権者となっている。Bittrex創業者のビル・シハラ元CEOは「ざまぁみろ」と思っていることだろう。
復活なるか、コインベース
さて、ここまでは破綻したBittrexの話だったが、同社と同じ年に設立されたコインベースの決算を最後に紹介したい。4日に発表された2023年1-3月期の売上高は7.72億ドル、最終損失は7800万ドルと赤字着地だが、売上高は2四半期連続で前四半期比増となったほか、最終損失も2022年10-12月期の5.5億ドルの赤字から大幅に縮小した。発表後の同社の株価は安値47ドル台から58ドル台まで上昇。5四半期連続での最終赤字ではあるが、赤字幅縮小をポジティブに捉える投資家が多かった。
一方、2023年4-6月期に関しては、訴訟費用などのコストが増加する見通しと説明している。この訴訟とはもちろんSEC相手の訴訟である。SECが出した「ウェルズ通知(SECが法的措置を講じる予定だと伝える公文書)」に対して、「SECは恣意的な取締りを行っている」と非難するなどSEC相手に裁判で争う気満々だ。FTX亡き今、業界の盟主であるコインベースとバイナンスが今後、規制当局とどのような応酬を繰り広げ、どのような結果を迎えるのか非常に興味深い。
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