1. 直近1週間のBTC相場
今週(5/14−5/20)のビットコイン円相場は、週初364.2万円で寄り付いた後、早々に週間安値362.0万円まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)警戒されていたG7財務相・中央銀行総裁会議で特段のサプライズが見られなかったことに対する安堵感(暗号資産がテロ活動や制裁回避に使われないよう規制・監視を強化する重要性を明記するに留まったことでアク抜け感が広がる展開)や、(2)対話型人工知能「ChatGPT」を開発した米オープンAI社のサム・アルトマンCEOによる暗号資産を用いた資金調達実施報道、(3)米債務上限問題を巡る不確実性(米国のデフォルトリスク残存)、(4)オプション市場のアップサイドを織り込む動き(リスクリバーサルが全ての期間でBTCコールオーバーに転換)、
(5)対主要通貨での円売り圧力(ドル円急伸→ビットコイン円連れ高)、(6)アルトコインの堅調推移(暗号資産市場全体に広がる楽観ムード)、(7)伝統的金融市場のリスクオン再開(世界的な株高→暗号資産関連株急上昇→市場心理改善→リスクアセット上昇→ビットコイン上昇)、(8)テザー社による「今月より利益の最大15%をビットコインの購入に定期的に割り当てる(Starting this month, Tether will regularly allocate up to 15% of its net realized operating profits towards purchasing Bitcoin)とのツイート発信が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値379.4万円まで上昇しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(9)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米ドルと逆相関性の強いビットコインに下押し圧力)や、(10)米債務上限問題の進展期待(脱ドル化の動きの後退→ビットコイン下落)、(11)金先物価格の大幅下落(デジタルゴールドの異名を持つビットコインの下落要因)、(12)豪ウェストパック銀行による「バイナンスへの支払い禁止」発表が重石となり、本稿執筆時点(日本時間5/20午前10時00分現在)では、371.2万円前後で推移しております。
尚、今週は、欧州連合財務相理事会による「暗号資産市場規制法案(MiCA)」の最終承認(同法案は暗号資産の発行・交換・保管を行う事業者に欧州域内単一の免許を取得するよう義務付ける制度で2024年に施行される見通し。また、2026年1月からは、租税回避やマネーロンダリング阻止を目的に事業者に暗号資産の送金者と受取人の名前取得を義務付ける方針)や、英議会財務特別委員会による規制強化を求める報告書(同委員会はビットコインやイーサリアムなどの暗号資産についてギャンブルとして規制すべきとする報告書)が公表されましたが、ビットコイン円相場への影響は限定的となりました。
2. 移動平均線(テクニカル分析)
ビットコイン円相場は、90日移動平均線に下支えされる形で持ち直しましたが、21日移動平均線および50日移動平均線の上方ブレイクには失敗しました。21日移動平均線と50日移動平均線のデッドクロスを経て、強い買いシグナルを示唆する強気のパーフェクトオーダーも消失しており、テクニカル的に見て、やや上値の重さを印象付けるチャート形状となりつつあります(来週は21日移動平均線や50日移動平均線を突破できるか否かに注目)。
3. ボリンジャーバンド(テクニカル分析)
ビットコイン円相場は、ボリンジャーバンド下限に下支えされる形で持ち直しましたが、ミッドバンドの上方ブレイクには失敗しました。弱気のバンドウォークは解消されたものの、ミッドバンドの傾きが右肩下がりへ転じているため、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
4. 一目均衡表(テクニカル分析)
ビットコイン円相場は、一目均衡表転換線を上抜けしましたが、一目均衡表基準線に続伸を阻まれ失速しました。アップサイドには一目均衡表雲上限も待ち構えているため、ここからの上昇は容易では無いと考えられます。しばらくの間は、一目均衡表の「雲の中」でもがく動くが続きそうです。
5. RSI(テクニカル分析)
オシレータ系インジケータのRSI(Relative Strength Index)は40%台へ浮上しましたが、依然として中立圏内(30%−70%)での推移に留まっています。ローソク足とRSIの方向性が逆行するダイバージェンスも発生しておらず、現在はRSIから相場の方向性を読み解くことが難しい状況です。
6. まとめ
ビットコイン円相場は、4/14に記録した年初来高値411.3万円をトップに反落に転じると、5/12に約1カ月半ぶり安値となる351.0万円まで急落しましたが、今週は急ピッチな下落の反動もあって持ち直す動きとなりました(3/28安値350.3万円や、3/27安値350.0万円、3/22安値350.8万円を死守できたこともショート勢のポジション解消を誘発)。但し、アップサイドに複数のレジスタンスポイント(21日移動平均線、50日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表基準線、雲上限など)が並んでいることや、強い売りシグナルを示唆する「弱気のパーフェクトオーダー」が成立したこと等を踏まえると、ここからの更なる上昇は容易ではなく、来週は上下共に方向感を見出しづらい時間帯(レンジ相場)が続くと考えられます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)伝統的金融市場のリスクオン再開(世界的な株高→市場心理回復→リスクアセット上昇→ビットコイン上昇)といったポジティブな動きが見られる一方、(2)米FRBによる追加利上げ観測(米金利上昇→米ドル高→ビットコイン下落)や、(3)米債務上限問題の進展期待(脱ドル化の懸念が後退→ビットコイン下落)、(4)欧州および英国での規制強化報道、(5)米地銀を巡る金融システム不安後退(金先物価格下落→ビットコイン下落)といったビットコインのネガティブ材料も散見されるなど、強弱まちまちの内容となっているため、テクニカル同様、ファンダメンタルズ的な側面で見ても、方向感を見出すには至らないと考えられます。
但し、上記2については、週末にパウエルFRB議長が「信用不安を考慮すれば金利を十分に高く上昇する必要性はないかもしれない」とのハト派的な発言を行っている他、上記3についても一部メディアが週末に「米債務上限交渉に障害。共和党の交渉担当者が退席」と報じました。また、上記5についても、イエレン米財務長官が「さらに合併必要な可能性を銀行幹部らに伝えた」と悲観的な発言を行っているため、米FRBによる利上げ観測、米債務上限問題、米地銀を巡る金融システム不安に関する続報次第では、ビットコインにトレンドが発生する可能性もあるため、これら3つのヘッドラインには常に細心の注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(BTCJPY): 350.0万円−400.0万円
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