1. 直近1週間のBTC相場
今週(9/3−9/9)のビットコイン円相場は上値の重い展開が継続。週初379.3万円で寄り付いたビットコイン円相場は、(1)200日移動平均線を背にした戻り売り圧力や、(2)アルトコインの冴えない動き(暗号資産市場全体に広がる悲観的なムード)、(3)二番底への警戒感(上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り→ビットコイン円相場が9/1に記録した安値371.0万円を大きく下抜けるのではないかとの悲観シナリオへの警戒感)、(4)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米2年債利回りが8/29以来の高水準となる5.03%へ急上昇、米10年債利回りは8/23以来の高水準となる4.30%へ急上昇→米ドルと逆相関性の強いビットコインの下押し要因)、(5)世界最大手暗号資産取引所のバイナンス社を巡る先行き不透明感(同社のプロダクト責任者であるマユール・カマト氏の辞職報道→7月以降の幹部辞職が3人目)、
(6)金融安定理事会(FSB)のクラース・ノット議長による「暗号資産と金融システムの繋がりが増大していること等を考慮すれば暗号資産領域にはより綿密な監視が必要」との見解発表、(7)過去最大規模(2423万ドル相当≒35.6億円相当)のETHのフィッシング被害が重石となり、週後半にかけて、週間安値375.0万円まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(8)下値の堅さを嫌気した短期筋のショートカバー(200日線突破に伴う仕掛け的なビットコイン買い→ショート勢のストップBUY誘発)や、(9)アルトコインの持ち直し(暗号資産市場全体に広がる楽観ムード)、(10)米レイバーデー明けの海外勢による本格的な上昇トレンド再開の思惑が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値389.0万円まで急伸する場面も見られました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、
(11)ブルトラップと思しき売り仕掛け(短期筋の失望売りを誘発)や、(12)9/9ー9/10の日程で開催されるニューデリーG20首脳会議を控えた警戒感(国際通貨基金/IMFと金融安定理事会/FSBによる暗号資産に関する提案が協議される見通し→世界的な規制強化の思惑)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間9/9午前5時20分現在)では、382.9万円前後で推移しております。尚、今週は米アーク・インベストメント・マネジメント社によるイーサリアムの現物型ETFの申請が明らかとなりましたが、市場の反応は限定的となりました。
2. 移動平均線(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の冴えない動きを受けて、日足ローソク足が全ての移動平均線(21日移動平均線、50日移動平均線、90日移動平均線、200日移動平均線)を下回っている他、直近では50日移動平均線と90日移動平均線のデッドクロス、21日移動平均線と200日移動平均線のデッドクロスも実現しました。テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
3. ボリンジャーバンド(テクニカル分析)
ビットコイン円相場が安値圏で下げ渋っていることで(安値圏でレンジ相場を形成したことで)、日足ローソク足はボリンジャーミッドバンドに到達しました。現在はボリンジャーミッドバンドを挟んだ上下動が続いている他、ミッドバンドの傾きも右肩下がりから横ばいに転じるなど、テクニカル的に見て、地合いの回復(下落トレンドから中立状態への改善)が期待されます。
4. 一目均衡表(テクニカル分析)
冴えない動きが継続する中、日足ローソク足は、一目均衡表転換線、基準線、雲下限の全てを下回る水準での推移が続いています。また、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転(転換線の基準線下抜け+遅行線の26日前ローソク足下抜け+ローソク足の雲下限下抜けの3つの条件が揃う状態)も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。但し、来週は遅行線が26日前ローソク足に接触する可能性が高く、その場合は、上記三役逆転の消失を通じて、地合いが幾分改善する可能性がありそうです。
5. RSI(テクニカル分析)
オシレータ系インジケータのRSI(Relative Strength Index)は中立圏内(30%−70%ゾーン)での推移が継続するなど、買われ過ぎ・売られ過ぎ共に、過熱感は見られません。但し、ローソク足の方向性とRSIの方向性が逆行するダイバージェンスが観測されているため、近い将来のトレンド転換(下落トレンドの終了→上昇トレンドの開始)の可能性に警戒が必要でしょう。
6. まとめ
ビットコイン円相場は7/3に記録した年初来高値454.1万円をトップに反落に転じると、9/1に約2カ月半ぶり安値となる371.0万円まで急落しました。今週は幾分持ち直すも戻りは鈍く、依然として二番底形成への警戒感が残っています。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲下限)の下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「短期線と中長期線のデッドクロス」が実現していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。但し、RSIでダイバージェンスが発生するなど、トレンド転換(下落トレンド終了→上昇トレンド再開)の可能性が高まっている点には注意が必要です。
事実、ファンダメンタルズ的には、(1)ビットコインの現物型ETFの早期承認期待の高まり(米グレースケールの勝利判決や、CNBCによる「ビットコイン現物型ETFが秋頃に全て承認される」との見解発表。ジェイ・クレイトン前SEC委員長による「ビットコイン現物型ETFの承認は不可避」との発言。暗号資産市場分析会社K33 Researchによる「市場はビットコイン現物型ETFの承認確率の高まりと、それに伴う潜在的なインパクトを大幅に過小評価している」との調査結果)や、(2)来年4月に予定されている半減期に向けての仕込み期待(米調査会社ファンドストラット社による「ビットコインは2024年4月の半減期までに18万ドルまで高騰する可能性がある」との見解や、米暗号資産ヘッジファンドのパンテラキャピタルによる「ビットコインは来年4月の半減期前に35,000ドル、半減後に148,000ドルに上昇するだろう」との見解)、(3)上記1、2を背景とした長期マネーの流入期待(米レイバーデーが明けたことで海外勢による本格的なポジション造成が始まるとの期待感も後押し)など、好材料が揃っています。
週末にインド・ニューデリーで開催されるG20首脳会議を無難に通過できれば、ビットコイン円相場が一転して持ち直す可能性も十分あり得ることから、当方では引き続き、ビットコイン円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(BTCJPY): 365.0万円−400.0万円
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