伝統的金融機関の三菱UFJグループが「果たせなかったビットコインの夢」に挑む
三菱UFJ信託銀行が、日本の法律に準拠したステーブルコインの発行・管理基盤である「Progmat Coin(プログマコイン)」基盤を活用し、国産ステーブルコインの発行に向けた共同検討を開始したと9月11日発表した。ビットコイン、イーサリアムなど既存の暗号資産の価格にほぼ影響を与えない発表内容ではあるが、日本のメガバンク系列の信託銀行が様々な金融機関をまきこんで行う熱いプロジェクトである。既に伝わっていた内容なので真新しさは感じ無いものの、伝統的金融機関の代表でもある三菱UFJグループがブロックチェーンを重要視している姿勢は嬉しい限りだ。
オールジャパン金融機関で検証へ
来年2024年10月をターゲットに、ブロックチェーンを基盤としたデジタル通貨・デジタル証券を発行する「プログマ」を分社化する。プログマには、三井住友、みずほ信託等、他のメガバンク系金融機関が出資するほか、NTTデータなども資本参加する。今のところ、証券会社の参加はないが、今後は証券会社の出資も募るようだ。
デジタル証券に関しては、ブロックチェーン企業のBOOSTRYが、不動産会社のケネディクスや三井住友信託、みずほ信託、野村証券などと協業している。また、SBIホールディングスは、STO(セキュリティ・トークン)ビジネスに力を入れるなど、大手金融機関も続々と動き出している。いずれのプロジェクトも、証券・債券の小口化と手数料の低減がターゲットとなっていると考える。
効果が大きいのは企業間の貿易決済
三菱UFJ信託のプレスリリースには、想定しているユースケースとして、
① 法人間決済(請求書電子受領を起点とした資金決済自動完結等)
② 貿易決済(貿易書類と連携した資金決済自動完結等)
③ NFT 取引(NFT の発行/売買に伴う資金決済のオンチェーン完結化等)
④ メタバース内決済(メタバース上のコンテンツ売買に伴う資金決済のデジタル完結化等)
が記載されている。推測するに、法人間決済及び貿易決済で生じる銀行が保証する支払いに対する信用証明書など煩雑な書類作成や、手数料の軽減化を検証するのだろう。実際、プログマの代表に就任する斉藤達哉氏は、記者会見にて「デジタル通貨導入の効果が大きいのは企業間の貿易決済である」と指摘しているようだ。
企業間でのコスト削減効果が期待できる話は裏を返すと、銀行の手数料減少を意味する。つまり、銀行は自ら手数料減少につながるプロジェクトを立ち上げたわけだ。
手数料軽減はビットコインが果たせなかった夢
昔、ビットコインが流行り出した2016年頃、「ビットコインやイーサリアムで海外送金を行うことで、手数料と時間が節約できることがメリット」という話をよく聞いた。残念ながら、トランザクション(取引)が猛烈に増加したことで、ブロックチェーン上の処理が遅くなったことから、「時間はかかるし、手数料も高い」状態となり、海外送金でのメリットが消え失せた苦い過去がある。
今回のプロジェクトは、かつて暗号資産が注目されたメリットに、伝統的金融機関が再注目し、金融機関が横断的に参加して実証実験を試みるわけだ。是非とも、スタートアップ企業などが試行錯誤して成し遂げられなかった、「ブロックチェーンを利用した利便性向上(手数料軽減)の実現」を果たしてほしい。
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