『二番底形成後に急反発。悪材料出尽くしで上昇トレンド再開に期待』
今週(9/10−9/16)のビットコイン円相場は、週初383.2万円で寄り付いた後、(1)インド・ニューデリーで開催されたG20首脳会議で「暗号資産の国際的な枠組みの早期実施」が求められたこと(各国首脳が署名した宣言内に「我々は暗号資産とステーブルコインの規制・監督・監視のための金融安定理事会のハイレベルな勧告を支持する」と記載)や、(2)上記1を背景とした世界的な規制強化の思惑、(3)対主要通貨での円買い圧力(植田日銀総裁による「マイナス金利政策の解除を含めいろいろなオプションがある」との発言→日銀によるマイナス金利脱却の思惑→新発10年国債利回りが2014年1月以来の高水準となる0.70%へ急上昇→円全面高→ドル円・クロス円急落→ビットコイン円連れ安)、(4)直近安値として意識されていた9/1安値371.0万円の下方ブレイク(二番底形成への警戒感→短期筋の大規模ロスカット誘発)、(5)アルトコインの全面安(暗号資産市場全体に広がる総悲観ムード)が重石となり、翌9/11にかけて、週間安値365.8万円(6/16以来、約3カ月ぶり安値圏)へと急落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(6)急ピッチな下落に対する反動買い(自律反発)や、(7)BitMEXアーサー・ヘイズ氏による「FRBが利下げを選択した場合、ビットコインは急速に70,000ドルまで上昇するだろう」との楽観的な見解発表、(8)米資産運用会社フランクリン・テンプルトンによるビットコイン現物型ETFの申請発表、(9)テクニカル的な地合いの好転(二番底形成後の持ち直し期待→200日移動平均線突破→本格的な上昇トレンド再開の思惑)、(10)重要イベント(米8月消費者物価指数、米8月生産者物価指数、米8月小売売上高など)通過に伴うアク抜け感、(11)暗号資産市場全体に広がる楽観ムード(今週初に記録した安値が今フェーズのクライマックス・セリングだったとの見方の増加→需給好転に伴う本格的な上昇トレンド再開への期待感→投資家心理改善)、(12)ドイツ銀行によるデジタルアセットカストディサービスの提供開始発表(ドイツ銀行はスイスの暗号資産関連事業者トーラスと提携の上、デジタルアセットのカストディサービス開始を発表→伝統的金融機関による暗号資産ビジネスへの参入期待)、
(13)FTXによる暗号資産の大口売却懸念の後退(米デラウェア州連邦裁判所は今週、昨年11月に経営破綻したFTXによる暗号資産の清算申し立てを承認したが、FTXが順次売却できる資産額は週1億ドルが上限→過度な大口売却懸念後退)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値396.0万円まで急伸しました。週末にかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間9/16午前6時15分現在)では、392.4万円前後で推移しております。尚、今週はゲーリー・ゲンスラーSEC委員長による「暗号資産は詐欺、悪用、違法行為に満ちている」とのネガティブ発言が見られましたが、市場の反応は限定的となりました。
2. 移動平均線(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の反発を受けて、日足ローソク足は21日移動平均線および200日移動平均線を突破しました。特に市場参加者に意識されていた200日移動平均線を上抜けできたことで、地合いの改善が期待されます。目先は400万前後に位置する50日移動平均線を上抜けられるか否かに注目が集まります。同水準を突破できれば、最後の関門となる90日移動平均線に向けて、一気に上値を伸ばすも可能性もあるため、来週は上値余地を探る動きとなりそうです。
3. ボリンジャーバンド(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の反発を受けて、日足ローソク足は、ボリンジャーミッドバンドを上方ブレイクしました。また、ミッドバンドの傾きも「横ばい」から「右肩上がり」に転じるなど、地合いの改善(下落トレンドから上昇トレンドへの転換)を期待させるチャート形状となりつつあります。ボリンジャーバンド上限に沿って上昇し続ける力強い動きが確認できれば、上昇トレンド入りを示唆する「強気のバンドウォーク」が点灯するため、本格的な上昇トレンド再開に向けて一段と弾みがつきそうです。
4. 一目均衡表(テクニカル分析)
ビットコイン円相場の反発を受けて、日足ローソク足は、一目均衡表転換線および基準線を上抜けしました。また、遅行線の26日前ローソク足の上抜けを経て、強い売りシグナルを示唆する三役逆転が消失しており、全体感として地合いの好転を期待させるチャート形状となりつつあります。目先は402万円前後に位置する一目均衡表雲下限を突破できるか否かに注目が集まりそうです(同水準を突破できれば、地合いが一段と好転し、ビットコイン円相場が本格的な上昇トレンドに突入する可能性あり)。
5. RSI(テクニカル分析)
オシレータ系インジケータのRSI(Relative Strength Index)は中立圏(30%−70%ゾーン)での推移が継続するなど、過熱感(買われ過ぎ感・売られ過ぎ感)は特段見られません。但し、トレンド転換シグナルとして意識されるダイバージェンス(ローソク足とRSIの方向性の逆行)が発生し、実際に足元でトレンド転換の兆しが見え始めているため、来週はここ数日の回復基調が本物なのか騙しなのかを見極める展開となりそうです。
6. まとめ
ビットコイン円相場は7/3に記録した年初来高値454.1万円をトップに反落に転じると、今週初の9/11に約3カ月ぶり安値となる365.8万円まで急落しましたが、週末にかけては一転、一時396.0万円まで反発しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線)を上抜けした他、RSIにてトレンド転換を示唆するダイバージェンスが継続するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を期待させるチャート形状となっております(市場では9/11に記録した安値365.8万円が今セッションのクライマックス・セリングだったとの見方が増加)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)ビットコインの現物型ETFの早期承認期待の高まり(今週は米資産運用会社フランクリン・テンプルトンもビットコイン現物型ETFの申請を発表。また、暗号資産市場分析会社K33 Researchは前週、「市場はビットコイン現物型ETFの承認確率の高まりと、それに伴う潜在的なインパクトを大幅に過小評価している」との調査結果を発表済)や、(2)来年4月に予定されている半減期に向けての上昇期待(半減期に向けての各社予測は、米調査会社ファンドストラット社が18万ドル、米暗号資産ヘッジファンド・パンテラキャピタルが14.8万ドル)、(3)上記1、2を背景とした長期マネーの流入期待、(4)伝統的金融機関による参入期待(ドイツ銀行は今週デジタルアセットカストディサービスの提供開始を発表)など、ビットコイン円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。
警戒されていたFTXによる大口売却観測も、週1億ドルの上限額が設定されたことで懸念が幾分和らいでいるため(FTX売りを見込んでショートポジションを有していたプレイヤーのショートカバーを誘発)、当方では引き続き、ビットコイン円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週開催される米FOMCのSummary of Economic Projectionsで予想外にハト派的な見解が示されれば、米金利低下→リスクアセット上昇の経路で、ビットコイン円相場がサプライズ的に急伸するシナリオが想定されます。一方、Summary of Economic Projectionsでタカ派的な見解が示される場合には、米金利上昇→リスクアセット下落の経路で、ビットコインには一時的に下押し圧力が加わる恐れがあるものの、FOMC通過に伴うアク抜け感から、一巡後に持ち直すシナリオが想定されます(足元の相場環境下においては、いずれのケースもビットコイン相場の上昇に繋がる公算大)。
来週の予想レンジ(BTCJPY): 380.0万円−420.0万円
- 関連通貨:
関連記事
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:照葉 栗太
2023.09.23
ビットコイン分析『日米金融政策イベント通過に伴うアク抜け感から上昇トレンド再開に期待』(9/23朝)
今週は週央にかけて406.2万円(8/29以来、約3週間ぶり高値圏)まで持ち直すなど、ビットコイン円相場に復調の兆しが見えつつあります
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:山中 康司
2023.09.22
暗号資産週報「短期高値を見てやや下押ししやすい流れに」(9月第4週)
株式市場のリスクオフの動きがビットコインにも影響し、上げる前のもみあい水準に押しての週末となりました。
-
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:照葉 栗太
2023.09.19
ビットコイン円、心理的節目400万円を一時突破するも引けにかけて再び反落(9/19朝)
週明け18日(月)のビットコイン円相場は急伸後に急反落。
-
暗号資産(仮想通貨)情報
Edited by:山中 康司
2023.09.15
暗号資産週報「レンジをやや上にシフトしてのもみあい継続」(9月第3週)
ビットコインは週初に下げた後に戻す動きとなりましたが、最大の理由はトピックスでも扱うFTXによる暗号資産売却思惑がありました。