LPS法改正で企業の資金調達の選択肢に暗号資産も加わる、Web3に向けて一歩前進
先週末、「Web3」を成長戦略の柱として掲げる政府から、暗号資産を用いた資金調達に関して一歩前進の話が出た。スタートアップ企業が、暗号資産での出資を受ける際の規制を緩和する新制度を来年あたりにスタートさせる。
新制度の対象となるのは、投資事業有限責任組合(LPS)と呼ばれるファンドで、スタートアップ企業が発行する有価証券への投資を目的に複数のベンチャーキャピタルなどが資金を出し合って組成する。そもそもLPSは投資事業組合の一種で、投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づいて組成される。つまりこの法律を改正するわけだ。
LPSによる投資対象は、株式や株式購入の権利(ストックオプション)に限定していたが、今年4月、経済産業省は、金融商品取引法で規定するセキュリティートークンへの投資も対象とした。着実に間口が広がりつつあるなか、この対象に暗号資産も加えるとの話がようやくでてきた。
IEOによる資金調達件数は伸び悩む
日本では、これまで4社がIEO(Initial Coin Offering)によって資金調達して、国内暗号資産交換所で取引を開始した。2021年から2年ほど経過しているが、いまだ4社と寂しい限りだ。IEOが増えない背景として、暗号資産市場及び業界全体が下火となっているうえ、IEOの申請がそれなりに面倒な点があるのだろう。東京証券取引所に新規で株式を上場させるIPOよりは時間がかからない(IPOは財務諸表、経営計画等の確認があるので最低でも2年はかかる)と思うが、IEOも自主規制団体などが管理・監督している以上、それなりの体制構築が求められるので決して楽ではない。IEOの話は別の機会とするので、LPS法の話に戻る。
来年実施される見通しのLPS法改正は、スタートアップ企業の資金調達の選択肢が増える事を意味する。日本は、資金決済法という明確な法令を整備し、世界に先だって暗号資産の法制化を進めた。一方、企業投資や出資、税制に関する暗号資産の規制緩和では世界に後れを取っていた。
日本は投資家保護を先に整備し、企業投資や税制の規制緩和は後回し
これは、2014年に発生したMt.Gox事件でダメージを追った個人投資家が多かったことから、投資家保護を目的に法制化を最優先とした事情があった。まずは投資家保護に着手したあたりは、とても日本らしい。
そんな日本も、政府が「Web3」というテーマを掲げている以上、制度設計の見直しを進めている。国税庁が今年6月に暗号資産の期末時価評価課税の見直しを通達したことも第一歩だ。自社で発行した暗号資産やトークンの価値が上がれば上がるほど、売却していないのに課税される不可思議な制度がようやく見直された。まだ、自社が発行した暗号資産やトークンに限定されており、ビットコインなど既存の多くの暗号資産に適用されるわけではないのでまだまだ道半ばだが、一歩一歩着実に進んでいることは間違いない。
LPS法の改正を意味あるものとするためには、税制の見直しもマストと考える。追加の税制の見直しが行われたタイミングで、改正されたLPS法を活用するスタートアップ企業が増加するだろう。資金決済法や金商法などの法解釈の整備やレバレッジ規制など投資家保護は十分にできているので、政府は、後れを取った企業投資や出資、税制に関する規制緩和、制度見直しを是非とも進めてほしい。
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