「アルゼンチンに中銀廃止主張の大統領が誕生、BTC支持のミレイ氏が向かう先は?」
注目していたアルゼンチン大統領選挙の結果が、11月20日に判明した。右派の下院議員で経済学者のハビエル・ミレイ氏が勝利した。ミレイ氏は「中央銀行の廃止」を掲げており、アルゼンチンのトランプ氏の異名を持つ。早速、ミレイ氏は支持者を前に「アルゼンチンの状況は危機的だ。この国には抜本的な変化が必要で、物事を徐々に進める余地はない」とぶち上げた。
公約通りであれば、アルゼンチンは今後、中央銀行を廃止し、ドルがアルゼンチンの法定通貨となる。無政府資本主義者であるミレイ氏は、ビットコインを「おカネが本来の創造者である民間部門に戻ってきたものである」と表現し、支持していることから暗号資産業界も関心が高い。今のところ、ビットコインを法定通貨とする主張は行っていないが、仮にドルを法定通貨とした後に、ビットコインも追加で法定通貨とする可能性は十分ある。
〇闇レートが存在するアルゼンチンペソ
そんな無くなるかもしれないアルゼンチンペソ(ARS)は、今年8月以降、対ドルでは350ARS水準で横ばいが続いている。これは政府当局が管理しているため、ほぼ固定レートのようなチャート形状だ。
一方、アルゼンチン国家統計局が発表した2023年10月の消費者物価指数は、前年同月比142.7%の上昇と、1991年8月の同144.4%以来の大幅な上昇率となった。主に主食であるパンや肉の上昇が目立っており、現在、9か月連続で同100%を上回る激しい上昇率となっている。激しいインフレの一方、政府当局による管理でARSはほぼ固定レートとなっていることなどから、歪な経済構造への不満がたまり、ミレイ氏を大統領に押し上げる原動力となった。
大統領選挙前後のARSは、非公式(闇)レートでは、1ドル800ARSから1000ARSで推移しているようだ。南米の暗号資産交換所PaxfulでのARS建てのビットコインは、1BTCあたり1824万ARSと史上最高値を更新中である。ドルベースのビットコイン以上に、ARSベースのビットコインの価値が上がっていることから、PaxfulのARSレートは非公式レートが使われているのだろう。「暗号資産交換所でのレートは、非公式レートを使用している?」と思われている時点で、公式のARSはかなりヤバい通貨だ。
〇ミレイ政権はエルサルバドルを超える経済実験を行うのか?
今年12月10日に発足するミレイ政権の前途は多難だ。そもそも議会では少数与党であることから、中央銀行廃止等に伴い必要と見られている憲法改正はままならない。今後、ドルの法定通貨化を進める過程で、ARSの公式レートと非公式レートを一本化した際、アルゼンチン経済が立ちいかなくなる可能性もある。ARSの一本化後、アルゼンチン経済が大混乱となった際、「ビットコインの法定通貨化」の議論が巻き起こるかもしれない。
2年前のエルサルバドルのような熱い展開が、2024年には南米の大国アルゼンチンで見られる、と想像するとかなり胸熱な話だ。もっとも、世界銀行や国際通貨基金(IMF)などアルゼンチンと債権債務の関係にある人たちはたまったものではないだろう。GDPベース(IMFが発表した2023年GDP)で比較すると、アルゼンチンは641,102百万ドルとエルサルバドル(33,752百万ドル)の20倍近くある。経済規模がまるで異なるからだ。ただ、エルサルバドルとは比較にならない、アルゼンチンの壮大な経済実験は見てみたい。
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