MTGOX復活?一部債権者が民事再生手続開始を申し立て(17/11/30)

ビットコインが史上初のU$10,000を突破し、U$11,000に達した29日、一時は世界最大のビットコイン取引所とされたにもかかわらず

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MTGOX復活?一部債権者が民事再生手続開始を申し立て(17/11/30)

マウントゴックスの一部債権者が民事再生手続きを再申し立て

ビットコインが史上初のU$10,000を突破し、U$11,000に達した29日、一時は世界最大のビットコイン取引所とされたにもかかわらず、ハッキングにより顧客の資産の大半を失って破産手続き中の渋谷区の株式会社マウントゴックス(MTGOX)に関連して、一部の債権者が今月24日に東京地方裁判所に対して民事再生手続き開始の申し立てを行ったことが明らかになりました。

一時は世界最大の仮想通貨取引所、2014年にハッキングにより破綻、破産手続き中

MTGOXは2014年の2月に主として顧客資産であった744,408ビットコインを外部からのハッキング行為による損失で失い、破産に至ったとされています。
その後社長だったフランス人マルク・カルプレス氏がビットコイン消失の関与を疑われ私電磁記録不正作出・同供与および、業務上横領容疑で逮捕起訴され現在も裁判中、本人は2016年7月に保釈されています。
Mt.GOXは2014年2月に一旦民事再生法の適用を申請していますが、4月に東京地裁は申請を棄却し、破産手続きを開始し現在に至っています。
この事件に関しては当初から誰がビットコインを盗み出したのかが明らかでなく、疑われたカルプレイスは一貫して関与を否定していました。
一方その後の調査で202,185ビットコインがMTGOX内に残されていたことが判明しています。
MTGOXの債権者は金額ベースで95%以上が外国人といわれており、社長がフランス人、本社所在地が渋谷という複雑な状況下で破産手続きが半年に一度開催される債権者集会総会を軸に管財人により進められてきています。

ところが、今年になって状況にいくつかの変化が生じています。

「真犯人」の逮捕

まず、今年の7月にアレキサンダー・ビニック(偽名ともいわれている)と名乗る同業のビットコイン取引業BTC-eのロシア人幹部が資金洗浄の疑いで米当局に逮捕、起訴されましたが、記録から彼がMTGOXから約63万ビットコインを盗み出した可能性が高くなりました。このため現在も裁判中のカルプレス前社長が主張どおり無実、かつ、盗まれたビットコインの大半が返還される可能性が出てきました。

ビットコインの価格上昇により、破産会社が「満額」配当可能に?

日本で仮想通貨の法規制が決まって以降ビットコインの価格が上昇したことはご承知の通りです。それにより、MTGOXに残されていた約20万ビットコインの資産価値が上昇しています。
破産管財人が現在認めている債権額は約456億円、20万ビットコインを仮に1ビットコイン100万円で評価すると2,000億円。もし評価額どおりにビットコインを処分できればすべての債権者に弁済しても十分お釣りが来る状況となっています。

ビットコインの上昇分の利益のほとんどはカルプレイス前社長に!?

しかし、ここでひとつ問題があります。破産管財人の認定している債権者の債権額は、ビットコインを破産手続き開始時点の1ビットコイン約5万円(正確には50,058.1円)で評価しています。当初より債権者のうち過半を占めるビットコインホルダーからは、ビットコインのままでの返還を求める声が強かったのですが、日本の破産法上は確定された債権額以上の配当は不可能で、残余の財産は出資者に配当されることとなるというのが管財人弁護士の見解です。

ちなみに債権者はある時点で保有分のビットコインを現金で受け取りたいか、ビットコインで受け取りたいかを聞かれて選択していますが、ビットコインで受け取りたいとしている人でも、元のビットコインをそのまま受け取れるわけではなく、5万円で円換算した債権額を時価のビットコインで受け取れるだけのことであることが前回の債権者集会で明らかになっています。

そのためもし、真犯人からビットコインを取り戻したとしても、もともとのビットコインの所有者には5万円分しか返還されず、残り95万円×80万ビットコイン=7,600億円(正確にはその他の債権を差し引いた約7,550億円)は株主であるカルプレイス元社長他少数の株主のものとなります。仮に盗難分が戻らなくても、現在のビットコインの残余価値の約3/4、1,500億円は出資者の手に渡ることになります。

さらに、MTGOXのビットコインは分裂により同数のBITCOINCASHを産んでおり、11/30現在1個当たり、約17万円の価値がありますが、(80万個と概算すると1,360億円)これも出資者の帰属となるとの見解が管財人弁護士より示されています。

民事再生手続きは債権者がビットコインを取り戻す唯一の手段か

しかし、仮にMTGOXが犯罪行為に加担していなかったとしても、ハッキングを防止できずに顧客に迷惑をかけた責任のあるMTGOXの出資者とりわけカルプレイス氏がこの間の含み益を享受することは債権者にとっては到底納得できるものではないでしょう。しかも、破綻なかりせばの受け取れる金額が日に日に増加している現状では、債権者のストレスは高まると同時に、成果報酬ベースでいくらでも優秀な弁護士を雇うことができるようになっています。

MTGOXの債権者集会はほぼ半年毎に東京で開催されていますが、終始日本語で行われることもあって質疑は活発ではありません。一方で大口の債権者の外国人を中心に主として二つのグループが債権者集団として活動を行っており、それぞ弁護士等の専門家を交えて対応策を検討しています。

今回の民事再生手続きについては一方のグループの弁護士団から解決策としてアドバイスがあり話題になっていたもので、このまま破産手続きを続けるとビットコインを正しい価値で取り戻すことはできないので、一度は否認された民事再生手続きを再度申し立て会社自体を復活させることにより、何らかの形で各々のビットコインを取り戻そうとする試みと思われます。

東京地裁は民事再生手続き可否の調査を開始

ただ、今回の申し立てに関しては今のところどちらの債権者グループも公式には申し立ての事実を認めていません。
カルプレイス元社長自身も民事再生手続き再開の道を探っていた形跡がありますが今のところ本人も何も承知していないとツイートしています。

破産管財人の小林信明弁護士による通知では、東京地方裁判所は調査命令を発令し、申し立て棄却事由の有無を調査、結果を踏まえ民事再生手続きの開始を判断することになりますが、裁判所から新たな決定がなされない限り破産手続きは従前どおり進行するとのこと。

この事件はいろいろな意味で全世界的に注目を集めている案件であり、ビットコイン自体の高騰も話題となっているだけに今後の帰趨が注目されます。

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