ビットコイン相場のテクニカル分析(2019年5月中旬)

ビットコインの対円相場は、昨年12月に付けた安値35.4万円をボトムに切り返すと、その後の2度に亘る「三角持ち合い」からの上放れを経て

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ビットコイン相場のテクニカル分析(2019年5月中旬)

1. 概況

ビットコインの対円相場は、昨年12月に付けた安値35.4万円をボトムに切り返すと、その後の2度に亘る「三角持ち合い」からの上放れを経て(添付チャートの赤丸部分)、心理的節目65万円(添付チャートの赤の点線部分)の突破に成功しました。5/11には、約7ヶ月ぶり高値となる74.4万円まで上昇するなど、昨年11月に発生した仮想通貨大暴落「前夜」の水準を回復するに至っております。

1.	概況

こうした楽観ムードの背景には、①世界的な金融緩和期待を反映してリスクアセットとしてのビットコイン需要が高まっていること、②資金決済法及び金商法の国会提出を経て仮想通貨市場に健全化ムードが広がりつつあること、③ビットコインETFやBakkt(バックト)など機関投資家参入を想起させ得る潜在的な好材料が増えつつあること等が挙げられます。また、短期的な視点で見れば、④米中貿易摩擦の激化やグローバルに広がる地政学的リスクなど、リスク逃避先としてのビットコイン需要の高まりも指摘されます。つまり、仮想通貨ビットコインは、リスク選好時に上昇するリスクアセットとしての側面と、リスク回避時に逃避資産として選好される安全通貨としての側面双方の影響から価格が押し上げられた格好と推察されます。米司法省によるテザー社への訴追や、世界的な大手仮想通貨取引所バイナンスでのハッキング事件など、錚々たる悪材料をこなした上での直近高値更新でもあり、ビットコイン相場の上昇モメンタムは極めて強く、また信頼性のある「押し上げ」と整理できます。本稿では、ビットコイン相場の先行きについて、テクニカル分析及びポジション分析の観点で考察いたします。

2. 移動平均線

2.	移動平均線

2月下旬に発生した、21日移動平均線(青)と90日移動平均線(緑)のゴールデンクロスを皮切りに、その後ビットコイン円相場は上昇トレンドに突入しました。4月上旬には、約1年ぶりに200日移動平均線(赤)を上抜けした他、4月中旬には、21日移動平均線(青)と200日移動平均線(赤)のゴールデンクロス、5月2週目には、90日移動平均線(緑)と200日移動平均線(赤)のゴールデンクロスを実現するなど、短・中・長期全てにおいて上昇モメンタムの強さが確認されます。

3. ボリンジャーバンド

3.	ボリンジャーバンド

トレンドの方向性を示唆するボリンジャーバンドのミッドバンドは、「横ばい」から「右肩上がり」の形状にシフトしました。ローソク足もミッドバンドの遥か上方で推移するなど、ビットコイン円相場は明確に「上昇トレンド」入りしたと整理できます。また、相対的な価格の高さを表す「%b」が1.0を超えていること、バンドワイズチャートがスクィーズ状態から上放れに転じていることを踏まえれば、ボリンジャーバンド上限に沿って上昇を続ける「バンドウォーク」の可能性も想定されます。同現象が生じた場合、ボリンジャーバンドにはオシレータ系指標としての役割は無くなりますので、+2シグマを超えたからといって安易に逆張ることは危険と判断できます。

4. 一目均衡表

4.	一目均衡表

一目均衡表(日足)を確認すると、①転換線の基準線上抜け、②実体の雲上限上抜け、③遅行線の実体上抜けが全て揃う「三役好転」が確認されます。向こう26日間を見通しても、抵抗帯の捻れは確認されず、トレンド転換の兆しは現時点で見られておりません。ビットコイン円相場は引き続き上昇基調を辿ると予測されます。

5. RSI

5.	RSI

ここ数日のビットコイン価格の急騰を受け、オシレータ系指標の代表格であるRSIは、83.7%まで上昇しました。過熱感(買われ過ぎ感)を表す70%ラインを大幅に超えている為、本来であれば戻り売り圧力が強まる局面です。しかし、強いトレンドが発生した際にオシレータ系指標は役に立ちません。事実、今週はハイレバレッジ・ショート勢が踏み上げられる苦しい展開が続きました。先述のボリンジャーバンドのケースと同様、安易な逆張りは危険と判断します(逆張る際は極力レバレッジを抑えた方が良さそうです)。

6. 先物動向

6.	先物動向

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表する、シカゴ・オプション取引所(CBOE)及びシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の5/7時点のビットコイン先物建玉一覧を確認すると、買い持ち(ロング)と売り持ち(ショート)の差を表すネット・ショートポジションがここ数週間で大幅に拡大していることが分かります。背景には、心理的節目6000ドルをバックに投機筋が逆張り目的でショートを積み増した可能性が指摘されます。こうした投機筋が保有するショートポジションのアンワインドが今回のビットコイン急騰の引き金となった可能性もあり、投機筋のショートポジションがどの程度減少しているか、来週5/17に発表される5/14時点の建玉一覧に注目が集まりそうです。

7. オプション動向

7.	オプション動向

ビットコイン・オプションの建玉(6月28日行使期日の対ドルオプション)を確認すると、引き続き6000ドル行使価格(≒660,000円)のオプションに建玉が集中していることが分かります。但し、ここ数日の傾向としては、7000ドル行使価格(≒770,000円)や8000ドル行使価格(≒880,000円)などトップサイドのオプションを買う動きが散見されます。個人投資家を中心にトップサイドを織り込む動きが強まっているものと推察されます。
通常、個人投資家はライブ(デルタヘッジ無し)でオプションを購入しますが、当該オプションの引き受け手となるMM(マーケットメイカー側)はダイナミックヘッジの一貫として原則デルタヘッジを行います。つまり、個人投資家が7000ドルのBTCコールオプションをデルタヘッジ無しで買った場合、MMはBTCコールの売りポジションから発生するデルタヘッジの「現物買い」を行う必要があります。つまり、直物市場へのインパクトは、ビットコイン価格を押し上げる方向となります。

また、1月~3月頃に頻繁に見られていたマイナーによる持ち値改善目的のカバードコールについても、マイナー側はデルタヘッジを原則行いません。一方、引き受け手のMMはデルタヘッジを行います。この場合、上記とサイドが真逆になりますので、MMはコールオプションのロングから発生するデルタヘッジの「現物売り」が生じます。つまり、マイナーによるカバードコールが流行っていた局面では、MMによるデルタヘッジの現物売りを通じて、直物市場へはビットコイン価格を「押し下げる」効果があったと整理できます。
もっとも、4月以降の動きをみると、マイナーによるカバードコールが減少する一方、個人投資家によるコールオプションの裸買いが増えつつあります。言い換えれば、MMによるデルタヘッジ目的の「現物売り」が和らぐ一方、デルタヘッジ目的の「現物買い」が強まることから、直物市場には現在、ビットコイン価格を「押し上げる」効果が生まれていると判断できます。

8. まとめ

以上の通り、ビットコイン円相場は、一部オシレータ系指標に過熱感が見られるものの、①昨年10月以来となる高値更新、②移動平均線のゴールデンクロス、③ボリンジャバンド上限に沿ったバンドウォークの可能性、④一目均衡表の三役好転、⑤先物市場に見られるショートカバー誘発の危険性、⑥オプション市場に見られるトップサイドを織り込む動き、⑦MMのデルタヘッジに伴う価格押し上げ効果などを考慮すれば、ビットコイン円相場は当面底堅く推移すると予想されます。もっとも、急激な上昇の反動から一時的に深めの押しが作られる可能性はありますが、心理的節目65万円は強力なサポートとして機能すると考えられます。5月中旬は、乱高下を繰り返しながらも、70万円台で足場を固める月となりそうです。

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