仮想通貨(暗号資産)リブラ(Libra)レクチャーイベント参加レポート2(19/7/31)

レポートは、イベントが開催された2019年6月24日時点における解説者の見解であり、時間の経過により現在の見解とは一致しなくなる場合もあります。

仮想通貨(暗号資産)リブラ(Libra)レクチャーイベント参加レポート2(19/7/31)

フェイスブック仮想通貨(暗号資産)リブラ(Libra)レクチャーイベント参加レポート2

主催:一般社団法人 日本ブロックチェーン協会 -JBA: Japan Blockchain Association-
開催日:2019年6月24日
解説者:弁護士 斎藤 創氏 創・佐藤法律事務所

Libraコインの登場とステーブル コイン規制 登壇資料

【注意】当レポートは、イベントが開催された2019年6月24日時点における解説者の見解であり、時間の経過により現在の見解とは一致しなくなる場合もあります。

Ⅰ.Libra仕組み

・詳細は福島良典さんが発表した通り ⇒参照
・Libra(トークン/コイン)は基本的には「リザーブ」を裏付けとしたIOU(借用証書)型ステーブルコイン

Ⅰ-1 -発行方法-

 (1)『投資トークン』の販売による発行
・『投資家トークン』を私募で(機関)投資家に販売 ※投資家/出資者が受け取るのが『投資トークン』
・支払われた金額がリザーブ(Libraリザーブ:準備資産)に当てられ、同額の『Libraコイン』を発行
・『投資家トークン』保有者へは『Libraコイン』は配布されない
・『Libraコイン』は各種運営(「ユーザー」「販売者」「開発者」を促すための支払い)に使用

(2)ユーザーによるリザーブへの拠出
・ユーザーの新Libraコイン受取=Libraコインと等価の法定通貨を供出し、リザーブに移行
・ユーザーはリザーブとは直接やりとりはしない
・効率性の観点から、認定再販業者のみが法定通貨とLibraをリザーブへの出入可能(日本のETFと同様?)

Ⅰ-2 -リザーブ運用-

・『リザーブ(準備資産)の裏付』は、低リスク資産(中央銀行が発行する通貨や公債等)に分散投資
・(リザーブの)投資による利子収入は、Libraエコシステムの発展のための運営資金等に利用
・運営資金等が充足された後の利益は、Libra『投資トークン』への配当となる(低利なのでかなり後)
・Libraコインのユーザーはリザーブからの利益(利子)を受け取らない

Ⅰ-3 -償還-

・認定再販売業者は、Libraコインをリザーブに対して持ち込み、同額※の法定通貨を受け取れる。
 ※同額:計算方法の詳細は不明。(裏付資産の時価を計算してその割合で計算か?)

Ⅰ-4 -売買-

・ユーザーは認定再販業者となる仮想通貨(暗号資産)販売所等を通じてLibraコインの売買が可能
・大きな金額の時は【3の償還】になるが、小さな金額の際は『新規発行⇒焼却』をせずに販売所等で売買
・仮想通貨(暗号資産)販売所等で「売買+発行+償却」されると、需要と供給で価格が変動する
・様々なアービトラージ取引※が行われることにより、Libraコインがリザーブの市場価格と近くなる
・Libraコインは、全体的に株式ETFに近い仕組みという認識を持っている

※アービトラージ(裁定取引):異なる市場において同一(価値)商品の価格差に歪が生じた際に「割高な市場で売る、または割安な市場で買う」ことで、価格差が正常に戻った際に反対売買で利益を得る取引

Ⅱ.ステーブルコイン

Ⅱ-1 規制

・「何々法の適用がある・ない」「仮想通貨(暗号資産)ではない」という議論は正確性を欠く
・ステーブルコインにも様々な方式があり、具体的な仕組みが日本法上だけでなく、米国・EU等、各国でどうなるかをそれぞれ確認・分析する必要性がある

Ⅱ-2 種類

(1)IOUモデル(I Owe You:借用証書)
・発行体がトークン保有者に対して、トークンを一定の金額で償還することを約束するモデル
・通常は法定通貨か別の実在資産により完全に裏付けられる
例:TrustToken[TrueUSD]、Tether[USDT]、ZEN(日本円/JPY)※
※ZEN:法定通貨(日本円/JPY)に対する安定的為替を持つ仮想通貨(暗号資産)
2017年4月にブロックチェーン推進協会(BCCC)が社会実験を発表した、

(2)オンチェーン担保モデル
・複雑なスマートコントラクト※1、異なる種類のトークン、オラクル※2、外部環境
…などを使用し、コイン価格のステーブル(安定)性を維持するモデル
※1.スマートコントラクト:Smart contract=プログラミング(デジタル)化により自動実行される契約
※2.オラクル:Oracle=当該ブロックチェーン外部(現実世界)に現存するデータを、当該ブロックチェーン内部に取り込むシステム『Oracle Database』のオラクル社とは関係ない
例:MakerDAO[DAI]


(3)通貨発行益モデル
・貨幣数量説に基づいて発行されるコイン
・トークンの価格を基準通貨や他の基準値と比較して安定させるために、トークンの供給を需給に応じて継続的に調整
例:Basis

Ⅲ.仮想通貨(暗号資産)法

Libraやステーブルコインが日本法上どこに該当するのか?(日本だけが特殊な状況)

(1)仮想通貨(暗号資産)の定義…下記に該当した場合『仮想通貨(暗号資産)』にあたる

①電磁的な財産的価値
   +
②電磁的に移転可能
   +

(a)不特定多数に対して使用可能、または
(b)不特定多数間で他の仮想通貨(暗号資産)と交換可能

④通貨建資産ではない

・Libraコインは①➁③に該当にすると思われるが、④通貨建資産に該当する場合には日本では「仮想通貨(暗号資産)ではない」となる
・ステーブルコインと規制の関係は、①➁③はほぼ全てのステーブルコインが該当するため、「④通貨建資産に該当するかどうか?」が重要である

(2)通貨建資産の定義…下記に該当した場合『通貨建資産』にあたる

a.本邦通貨または外国通貨で表示、または
b.本邦通貨もしくは外国通貨で、債務の履行・払戻、その他これらに準ずるものが行われる資産

・TrustToken[TrueUSD]とTether[USDT]の場合は発行体が「1コイン=1USDで償還」を約束している(筈な)ので、上記b.に該当し「通貨建資産に該当」と考えられる。
・ZENの場合は日本の規制を意識し、償還を「1ZEN=1円/JPY」と約束していない。発行体が常に仮想通貨(暗号資産)取引所のオーダーとして「1ZEN=1円/JPY」という同等価値で値段提示しますという約束をしているだけであり、定義上は通貨建資産に該当しないと考えられる。この場合、「償還を約束」しているわけではなく、あくまでも「買付/売付オーダーがある」というだけであり、「通貨建資産に該当しない」と考えられている。従ってZENは、仮想通貨(暗号資産)として日本のホワイトリスト(交換所で取引可能)に含まれている。

(3)Libraコインは仮想通貨(暗号資産)?

下記2つの理由から「通貨建資産に該当しない」=「仮想通貨(暗号資産)に該当する」と考えている

・通貨バスケットであり、特定の通貨にリンクしていない【注意】金融庁の見解ではありません。
あくまでも法定義では「本邦通貨または外国通貨」となっており、「ひとつの通貨にリンクする」ということを念頭に置いている。従って「バスケット」の場合は該当しない

・認定再販売業者が償還を請求する際は、リザーブの価値である「通貨」「ボンド(短期国債)」などの時価価値を踏まえて償還がなされると考えられる
・「ボンド(短期国債)」が含まれているため完全に「通貨」ではない。「ボンド(短期国債)」には価格変動があるため完全には「通貨に連動」せず多少ずれがあると思われる

【注意】ただし、性質をより詳しくチェックする必要があり、解説者とは異なった考えも有り得ます。

(4)日本でLibraコインが仮想通貨(暗号資産)に該当した場合

・「日本居住者に対して取り扱いができるか?」と聞かれると、回答は「できるけれども大変である」
・日本居住者に対する販売には、下記が必要
a.認定再販売業者は仮想通貨(暗号資産)交換業の登録
b.Libraコインの新規取扱は金融庁への届出(実質は承認)

・「自主規制」等を踏まえて、Libraコインを扱うには以下のような流れが考えられる。

仮想通貨(暗号資産)交換業者がチェック

認定自主規制団体(JVCEA)に申請

認定自主規制団体がチェック

金融庁に申請

金融庁がチェック


・日本ではZENが仮想通貨(暗号資産)として2017年に仮想通貨(暗号資産)交換業者に上場したが、2018年1月のコインチェック事件以降、新規コインは一件も認められておらず、上場に係る規定が多くなっている

・Libraコインは、かなりのメンバーが揃っている仮想通貨(暗号資産)であるため、彼らがやる気になって日本の仮想通貨(暗号資産)交換業者と組めば、金融庁の承認を受けることは(手間だけども)できるであろう

Ⅳ.為替取引

Ⅳ-1 銀行法・資金決済法

Libraコインが「通貨建資産に該当」=「仮想通貨(暗号資産)に該当しない」となった場合

(1)「通貨建資産に該当」となるステーブルコインは『為替取引』での該当性を考えなければならない

『為替取引』とは:遠隔地に直接現金を移転させる(例えば現金輸送車)のではなく、何らかのシステムを使用して資金を動かす場合、金額に応じて下記の登録が必要になる。(銀行振込などが該当)

a.1回100万円を超える為替取引=銀行業
b.1回100万円以下の為替取引=資金移動業

・Tether[USDT]などは、この『為替取引』に該当
Tether[USDT]を日本で発行する場合は発行体が銀行業(銀行免許)か資金移動業を取得しなければならない
※Libraコインは「通貨建資産に該当しない」と仮定しています。

Ⅳ-2 規制

(1)発行体

・MUFGコイン(現: coin)やJ-コインといった『銀行コイン』は銀行免許を持っている銀行が発行している為、「為替取引」とされても問題ない
a.三菱UFJフィナンシャル・グループ【MUFGのキャッシュレスに向けた取組みについて
b.MIZUHOみずほフィナンシャルグループ【J-Coinの取り組み
・海外の発行体が日本で「銀行免許」を取得することは、非現実的でLibraも同様に厳しいと思われる
・「資金移動業」であれば難易度は低いが、下記のような問題がある

a.1回100万円の制限をステーブルコインでどの様に確保するのか
b.未使用額の全額を供託しなければならない
b-1未使用の定義が日本で使われていないのか?海外で使われていないのか?など不確定なことがある
b-2全世界で使われていない全額を日本で供託するのは難しい
b-3『Libraリザーブ』は海外でリザーブされるが、日本でも供託しなければならない

(2)取引所/仮想通貨(暗号資産)交換所
・仮想通貨(暗号資産)交換所がLibraを取り扱いたくても、『仮想通貨(暗号資産)交換業』では範囲外
・海外で発行され日本では許可がされていないコインを、日本の取引所が取り扱うのは非現実的
・Tether[USDT]の場合は発行体の代わりに仮想通貨(暗号資産)交換所が自社で銀行業を取得するということも考えられるが、Libraではそれも非現実的

Ⅴ.前払式支払い手段の規制

・日本独自で発行する場合の可能性としては、ステーブルコインを『前払式支払手段』として発行されることも考えられる※Suicaや図書券など

・前払式支払手段は下記の条件を満たす必要がある
a.金額または数量の記録
    +
b.aに応じた対価の支払い
    +
c.発行体、又は発行体の加盟店で商品購入等に使用可能

・前払式支払手段は、何らかの商品購入のために発行されるものであり『資金移動』ではない
・「資金移動ではない」とするために、「償還」が原則として認められない等の制限がある
・海外発行のものを日本に持ってきて「償還ができない」と規定し、それを海外でも順守させるのは非現実的

(2)発行体
・発行体になるには、日本で第三者型前払式支払手段の登録が必要
・「償還が不可」等の問題があり、現在発行されているメジャーなステーブルコインとは異なる使用感
・未使用残高の半分を供託しないといけない…全額ではないが、グローバルの場合には非現実的


(3)取引所/仮想通貨(仮想通貨)交換所での利用
・顧客間の移動であっても、あくまでも前払式支払手段の移動であり、為替取引には該当しない可能性がある
・登録されている前払式支払手段型のステーブルコインを販売すること自体は、『他業』として可能かもしれない
・前払式支払手段型ステーブルコインと仮想通貨(暗号資産)の交換は、仮想通貨(暗号資産)の売買に準じて考える?(Suicaで仮想通貨(暗号資産)を購入する場合等)

Ⅴ.金商法:金融商品取引法

・『投資家トークン』は金商法の対象となる
・『Libraトークン(コイン)』は日本の定義では金商法の対象とならないと思われる
・一番考えなければならないのは「ファンド規制」

下記は、「集団投資スキーム※」として金商法の規制に該当

出資者が金銭を出資
   +
事業を営む
   +
収益の配当または出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利

※集団投資スキーム:
法的形式や事業の内容を問わず、包括的に金商法の規制対象である「有価証券」とみなされる。
金融庁【ファンド関連ビジネスを行う方へ(登録・届出業務について)】

Libraトークン(コイン)の場合

出資者が金銭を出資 ⇒ 金銭出資あり
   +
事業を営む ⇒ 「国債を買う」も事業に該当
   +
「収益の配当」「財産の分配」 ⇒ 共に「なし」
リザーブを運用して発生した利益は、Libraトークンのエコシステムの発展のために使用しされる。
余った資金はシェア(投資家)トークンの方に支払うため「利息は返さない」

【結論】
Libraトークン(コイン)の投資家(購入者)へは収益分配をしていないため、金商法の対象外と思われる

【議論(反対意見)】(著者注※登壇者が弁護士なので色々な議論を考える)
・下記の理由により、「Libraは有価証券だ」という意見もある
a.国債の価格変動等でLibraトークン(コイン)保有者が利益を得る可能性がある
b.日本円でLibraトークン(コイン)を購入し、その日本円が米ドルやユーロから投資されるため、米ドルやユーロが日本円に対して上場した場合、Libraの価値が日本円で上がる可能性がある
ただし、為替の変動リスクだけということであれば「ファンドではない」と今現在は思っている。

【海外】
・ヨーロッパ、シンガポールも日本と似たような考え方の規制で、おそらくLibraトークン(コイン)は有価証券には該当しないと思われる
・米国はHowey test※と呼ばれる有価証券の基準があり、「第三者の活動によって利益を期待している場合は有価証券だ」という考えに基づく『利益の主体』の解釈が日本より広い
しかし恐らく「利息が配当されない」ということでHowey testにて該当しないと考えて、Libraは作られていると推測される
※Howey test:
米国ではsecuritiesの範囲が明確には決まっておらず、通常『Howey Test』という判例基準で決定
参考:ICOと日本法

Ⅴ.まとめ

・ステーブルトークンの中にも種類がある
仮想通貨(暗号資産)?=Libraトークン、ZEN、MakerDAO、Basis
為替取引?=Tether[USDT]、TrustToken[TrueUSD]

・「ステーブルトークン(コイン)だからこうだ!」という議論は正しくなく、一つ一つ分析する必要性がある

・日本で発行する場合は「為替取引で銀行免許が必要」という方法より、「仮想通貨(暗号資産)で仮想通貨(暗号資産)交換業が必要です」「金融庁にコインの届け出をしなければならない」の方がやりやすいと思われる

・日本でもLibraが使える可能性は十分にあるという印象を受けている

~Editor感想~『法律のバグだ!』

当解説者の斎藤創弁護士も登壇された2017年8月の仮想通貨(暗号資産)のイベントにて、堀江貴文さんから発せられたこの言葉が印象的で、その後私も使わせていただいています。存在しているものに対して法律で規制することはできますが、新しく生まれたものに対して既存の法律で規制しようとすると、解釈次第で白にも黒にもなり、結論ありきでの解釈となってしまいます。従って、本来であればバグが見つかれば早急に対処・修正しなければならないのですが、残念ながら法規制を随時変更し続けることは『非現実的』です。

Libreに関して言えば、日本での導入を阻止しようと思えば「通貨建資産である」「有価証券である」…と定義していけば、『禁止』はできなくても「導入が困難で非現実的」となり『実質禁止』にすることができてしまいます。

Libraはグローバル展開を目論んでいるため、導入現地の法規制に準じなければなりませんが、仮想通貨/暗号資産の法規制において世界で一番進んでいるのは、日本であると言われています。日本にて来年2020年4月に予定されている新規制の施行に向け、法規制の穴を突いたビジネスではなく、法規制に準じた新たなビジネスとしてLibraを受け入れれば、仮想通貨/暗号資産/ブロックチェーン分野において日本は有意な位置につけるのではないかと期待しています。そして、日本にとってLibraはあくまでも通過点であり、続いて日本版Libraが産まれることを強く望んでいます。

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